中国のホストクラブで豪遊する「富裕層マダム」桁違いのマネー力

実際にホストクラブで働いてみたら…
西谷 格 プロフィール

ホストの中心にいた女性客の素性

客の輪の中心にいたのは、30歳前後のルルという名の色白のショートカットの女性だった。ホストたちは彼女を囲んで雑談やカラオケ、サイコロゲームに興じている。私は隣の席のサイコロに見入り、できる限りオーバーリアクションをして声を張った。

ルルに「日本人なの?」と聞かれて「そうだよ」と答えたが、「へー、そうなんだ」と言われただけで、それ以上の反応は特にない。かつて日中間の経済格差が大きかった時代には、中国人の間で「日本人=洗練されている」というイメージがあったようだが、いまやそうした先入観は皆無。彼らはまるで日本人に興味がない。

 

むしろ、ホストとして勤務していた間、私はなかなか指名が取れずに待機所で時間を潰していることのほうが多かった。中国では「イケメン=高身長」というイメージが極めて強固で、身長170センチあまりの私はこの業界では非モテと見なされてしまうのだ。先輩ホストからは「シャツが年寄り臭い」「髪は短髪のほうがいい」「中国のファッション誌を見て勉強したほうがいい」とアドバイスを受けた。

ホストクラブで働いていたころの著者

話をルルとの接客に戻そう。場が盛り上がって来た頃、ルルが不意にホストの一人に向かって「これ、私のお父さん」と言って、おもむろにスマホの画面を見せてきた。一緒に画面をのぞきこむと、そこには、《中国農業銀行の幹部たちが貧困地区を訪問》というタイトルのニュースサイトが表示されており、中高年の小太り男性が農村を視察する姿が写真付きで映っていた。

ルルの父は、大手銀行の幹部社員だったのだ。彼女、相当のお嬢様に違いない。典型的な「富二代(フーアルダイ、富裕層の子女)」だ。

その後、深夜0時を回った頃に部屋のドアが突然バンと開き、オールバックの男2人が入ってきた。ルルの友人かと思いきや、彼らは部屋の隅の一角を陣取ると、カバンのなかから音響機材を取り出しケーブルをつなぎ始めた。

間もなく部屋の照明がミラーボールに切り替わり、大音量のクラブミュージックが流れはじめた。ホストと客たちは立ち上がって歓声をあげ、その場で思い思いに踊り出した。彼らは出張DJだったのだ。こんなサービスまであるとは驚いた。