世界経済を揺るがす「トランプニュース」とビットコインの意外な関係

関係というより「無関係」!?
エミリー・パーカー, LONGHASH プロフィール

では、何がビットコイン価格を動かすのか?

ダートマス大学のエリック・ジツェウィッツ教授(経済学)は、トランプが米株式市場に与える影響力を分析してきた。では、ビットコインについてはどうか? ジツェウィッツ教授の見方は、次のようなものだ。

「減税が動機となる自己株買い戻しで生じた流動性と、利上げへの慎重なアプローチが、ビットコイン相場を下支えしていた可能性があります」

彼の言葉を言い換えれば、こうなる。企業が自社株を買い戻す際には、その売り手がいなければならない。この取引によって売り手は、再投資をすることが可能なキャッシュを手にすることになる。それがビットコインに流れた可能性もあるわけだ。ジツェウィッツ教授は、こう解説する。

「この構図は、ビットコイン以外の金融商品にも当てはまるものではありますが、資産価格が押し上げられる大きな要因となるのです。伝統的なものとは異なる、新しい資産についてもね」

前ページにあげたグラフは、意味のある分析を行うためには、ごく限られた期間の株式市場の上下動しかとらえていないのではないか、という指摘もありえるだろう。しかしいずれにしても確かなことは、トランプと株式市場は依然として同じ次元の中に存在するが、ビットコイン価格はトランプ・ニュースとはまったく独立して変動している、という点だ。

 

では実のところ、ビットコイン相場に影響を及ぼすものとは、何なのだろうか?

もっとも端的な回答は、ビットコインが仮想通貨に関連するニュースに影響される、というものだ。たとえば、ビットコインの総量をスケールするための最適な方法について、ビットコインのコミュニティが決裂しているといったニュースなどだ。

ビットコインはあまりに革新的なタイプの通貨であるため、その価値の大部分は、人々の成長への信頼によって決まっている。したがって、ビットコインは「仮想通貨には将来性がない」といった報道には、とくに左右されやすい。

逆に、ビットコインの基盤となるソフトウェア、Segwit2X(セグウィットツーエックス)の開発方針を巡って、大きな分裂が起こることが不安視されてした大論争が収束した際には、ビットコイン相場が急騰している。付け加えれば、バイナンス(中国)のような主要な仮想通貨の取引所がハッキングされたというようなニュースも、価格を下げる要因になっている。

政府がビットコインを規制しようとする試みも、ビットコイン相場に直接的な影響を与えている。ビットコインは少なくとも理論上、生き残るために政府の支援は必要ない。だが世界は、それが真実かどうかを見定めようとしているのだ。

現在のところ、ビットコイン価格は仮想通貨を取り締まろうとする政府の試みに強く反応している。2017年9月、中国が国内の仮想通貨取引所を閉鎖した際、ビットコイン価格は17%近くも下落した。だが中国による規制強化にも、ビットコインを打ち負かすほどの効果はないと明らかになったとき、ビットコイン価格はもとの水準を回復しただけではなく、過去最高額を記録している。

もっとも、ビットコインを規制しようとする政府の試みは、現在までビットコイン相場に短期的な影響を及ぼし続けている。より直近の状況を見ても、韓国政府が取引所を閉鎖させるかもしれないと報じられたことで、ビットコインは急落した。3月には、仮想通貨の規制に関する米証券取引委員会のコメントが、ビットコインの価格を下げている。

ただこれについて、前出のジツェウィッツ教授は、政府の規制強化によるビットコインへの影響という観点では、「アジア諸国での方針のほうが、米国の方針より重要視されてきたし、またこれからもそうであり続けるだろう」と確信していると話す。

だが、その状況はいつまで続くのだろうか。現在までのところ、トランプは株式市場について何度もツイートしているが、仮想通貨には個人的な関心をもっていないようだ。ただ、これも変わる可能性がある。もしトランプ本人がビットコインについてコメントすれば、ビットコインの相場も間違いなく何らかの反応をするだろう。

言い換えれば、ビットコインにもやがて、トランプ・ニュースの影響から逃れられなくなるときがくるかもしれない。ただ今現在は、いかにビットコイン市場が波瀾に満ちていても、それは少なくともトランプ騒動の影響によるものではない、と言えるのだ。(訳・山田敏弘)