「完売御礼」を喜ぶ経営者は、残念ながら無能です

これが「店長3大思い込み」だ
本多 利範 プロフィール

店舗経営にとって大切なことは何なのか

ここに一人の魚屋さんがいるとしましょう。

彼は自分で小さな鮮魚店を営んでおり、仕入れから販売まで一人で行っています。
早朝から彼はトラックを運転して市場に行き、自分の目で魚を吟味して旬の魚を仕入れます。店の常連客たちの顔を思い浮かべながら、どんな魚を仕入れたらお客様に喜んでもらえるか、真剣に考えるのです。

例えば立派なサンマを仕入れて店頭に並べるとします。目の前のサンマはたしかに立派ですが、今年はサンマが非常に高く、なかなか気軽に買ってもらえる価格帯にできないところが心苦しいところです。

しかし、今日は二五日です。たいていの会社が給料日であり、少しの贅沢なら許されるのではないかと考え、いつもより多めに仕入れてみました。

さあ、これをすべて売り切るために、どんな工夫をすればいいでしょうか? まずサンマの活きの良さが際立つよう、売り場を工夫します。

さらに店先に来られたお客様には積極的に声をかけて、このサンマが脂が乗っており非常に美味しいこと、どこの海で取れたものなのかといった情報を積極的に伝えていこうと、ねじり鉢巻きで営業を開始しました。

さて、なぜ私がここで魚屋さんの話をしたかというと、これが私のイメージする「商売」の原点だからです。

本来、商売というのは、一人で仕入れ、一人で品物を並べ、一人で売り切るものです。 しかしながら現在の私たちの仕事は、様々な人間、様々な部署が関わって進んでいます。

営業部、商品部があり、商品部の中にはさらにデリカ部長がおり、生活デイリー部長がいます。

我々コンビニ業界でなくとも、現代の世の中で、仕入れから販売まですべて一人で担っているという店は少なくなっているのではないでしょうか。

レストランでも、食材を仕入れる人間や下ごしらえをする人間、調理をする人間に調理補助をする人間、ホールでサービスする人間に会計をする人間と細分化されています。

服や雑貨を売る店でも、商品をつくる人間、買い付ける人間、店を経営する人間、販売する人間、経理を担当する人間など、様々な職種に分かれて一つの商売を行っています。

たった一つの商品に、どれほど多くの人間が関わって消費者の手元に届いていることでしょう。

しかし、その過程では、ともすると商品に対する愛情、つくり手、仕入れ人の思いが忘れられがちになります。

どのような発想でこの商品が考えられ、レシピが生み出され(あるいはパターンがつくられ、材料を買い付け)、商品がつくられ、運ばれ、店頭に届いたのか、それが希薄になってしまうのです。

マーケットが巨大になった現代では、分業化は致し方ないことかもしれません。しかし、そうであっても商売の原則は、一人で仕入れ、一人で品物を並べ、一人で売り切ることであり、流通業に関わる人間はこの精神を忘れてはならないのです。

仕入れた人間は、なぜこれを仕入れたのかという理由を、現場にきちんと言葉で届けなくてはなりません。

店頭スタッフは、どのような過程を経て、この弁当はつくられたのか、どこで取られた魚が、どのような調理法でつくられ、この弁当箱に詰められてきたのかを想像してほしいのです。

コンビニチェーンは、異なる資本金を持つ会社が集まり、店舗や本社で働く人間がチームとして参集し、一つの大きな有機的関係を築き成果を出していく事業です。
そのような仕事のあり方は、規模の違いはあれ、様々な分野に存在します。

現代の世は江戸時代ではありません。一人で仕入れ、一人で売り切れる商売は、むしろ少なくなっています。

「売れるようにしたい」とは誰もが思うことですが、商品を「売れる化」するためには、細かなテクニックだけでなく、その商品に関わってきた人々の様々な思いを知ること、想像することも大切ではないでしょうか。

たくさんの人々のアイデアや情熱がこもった商品を、お客様にお届けしたい。

そんな姿勢が、今の世だからこそ大切なのだと思っています。

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