排ガスの値をコントロールする不正ソフト搭載で顰蹙を買ったフォルクスワーゲン社が、今年の1月の終わり、またまたメディアを賑わせた。「動物と人間」を使っていかがわしい「実験」をしたからだそうだ。
「新聞記事によれば、サルだけでなく、人間までもが、排気ガスのテストにおいて二酸化窒素の有毒ガスに晒された」(シュピーゲルのオンライン版・1月29日)
「自動車ロビーは、排気ガステストに人間まで使った模様」(フランクフルター・アルゲマイネのオンライン版・1月29日)
「フォルクスワーゲンの監査役会の会長が実験についての説明を要求」(南ドイツ新聞のオンライン版・1月29日)等々。
「ドイツ」と「毒ガス」というと、もちろん強烈なネガティブ連想に結びつく。それどころかDeutschlandfunk(ドイツ国営のラジオ放送)では、わざとその連想を促すような報道までなされた。
「有毒なガスを人間に吸わせる」「歴史を振り返ってみれば、とても、とても恐ろしいこと」(1月29日)。
私の知る限り、大手メディアのうち、火消し役に回ったのは第一テレビだけだった。
「こういう実験は必要であり、被験者の健康への影響はほとんどない」(オンライン版・1月29日)。
しかし、それでも火は消えず、2月2日には議会において緑の党の要求で、「サルと人間を使っての実験についてのドイツ政府の姿勢」が問われた。
なぜ、この大騒ぎが起こったかというと、どちらの実験もEUGT(環境と交通セクターにおける健康のための欧州連合)という研究機関がスポンサーとなっており、そのEUGTを設立したのが、フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラー、ボッシュなど自動車関連企業であったためらしい。
ただし、サルを使った実験と、人間を使った実験のあいだには、何の関係もない。