医者が警告「動物由来感染症」の恐怖~あなたの愛犬もかかってるかも

覆面ドクターのないしょ話 第11回
佐々木 次郎 プロフィール

動物に噛まれて真っ赤に腫れたら、すぐ病院へ

動物の牙は尖っていて長い。咬傷の面倒なところは、傷が小さいわりに傷が深いことである。ガブッと深く噛まれた場合、私の経験では、多かれ少なかれ腫れる。原因菌として、動物の口腔内の常在菌であるパスツレラ菌(細菌)や皮膚に付着した皮膚糸状菌症(カビ)などがある。名前は覚えなくて構いません。大事なことは、真っ赤に腫れて、傷口から膿が出る場合は外科できちんと処置を受けた方が良いということ。

過去に、指を噛まれて腱が切れてしまった患者さんもいたし、骨折した患者さんもいた。傷が骨に達すると骨髄炎を起こし、いつまでも膿が出て非常に治りにくく、治療に難渋する。

 

なお、咬傷というとペットを考えがちだが、人間による咬傷もある。酒に酔った人に噛まれて化膿するのだ。人間の口の中には1000億個以上の細菌がいる。読者の皆様、老婆心ながら、清潔感のある恋人であっても、噛まれないように御用心!御用心!

猫による外傷で特徴的な病気といえば「猫ひっかき病」が有名だ。変わった病名だが、英語でも「cat scratch disease」という。猫は特有の細菌を持っていることがある。猫、特に野良猫を触って引っ掻かれたり、噛まれた1、2週後から首や脇の下のリンパ節が腫れて、37℃台の微熱が続くなら、「猫ひっかき病」を疑って病院を受診したほうがよい。一般には大ごとにはならず、抗生物質の投与で鎮静化する。

次は猫が媒介する病気について御説明いたします。

猫だけでなく、どの動物でも、糞便や口内には様々な病原体がいるので、糞便を直接触ってしまったり、キスしたりした場合は、よく手を洗い、うがいをしましょう。

猫のトイレ掃除の際に特に気をつける病気がある。トキソプラズマ症(寄生性生物)と猫回虫症(寄生虫)である。

トキソプラズマ症(寄生虫)は猫が媒介する代表的な感染症の1つである。トキソプラズマとは寄生性の生物(原虫)で、大きさが5μmほどなので肉眼では見えない。この病気の大きな問題点は、妊婦に感染すると胎児に影響が出るということだ。妊娠中の女性は特に気をつけていただきたい。

猫のトイレ掃除の後は、よく手洗いを(photo by isrock)

次に猫回虫症だが、回虫といえば、40~50年前までは、ありふれた寄生虫疾患だった。小学生の便検査でクラスに一人くらいは検出されたものだが、最近は珍しくなった。

猫回虫症は猫だけでなく犬の糞便からも感染する。気をつけたいのは公園の砂場だ。砂場は子どもたちが素手で遊ぶ。私も経験があるが、砂場を掘っていて、犬や猫のウンコをつかんでしまうことがあり、回虫の卵が手に付着する可能性がある。回虫は様々な内臓に寄生する。症状は腸管内で問題を起こすと腹痛、肺では喘息様症状を、脳に寄生すれば神経症状を起こす。回虫は駆虫薬があり、これで治療すればよいのだが、各臓器に寄生する前に治療することが望ましい。