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イヌに驚いて転倒→骨折→飼い主に賠償命令「1284万円」の衝撃

他人事では済まされない

リードを離したばかりに

大阪府高槻市東部、JR高槻駅から2 kmほどの場所にある、昔ながらの一軒家が立ち並ぶ住宅街。

騒動の原因となったダックスフントの飼い主の女性宅を訪ねると、初老の夫が疲れをにじませた表情で姿を現した。

「あの判決が出てからずっと、妻はふさぎ込んでいます。賠償の内容や今後の対応もふくめて、裁判についてはすべて保険会社に一任しているので、こちらでお答えできることは何もありません」

3月23日、大阪地裁で、全国の愛犬家を驚愕させる超高額の損害賠償判決があった。

〈被告に、1284万5130円の支払いを命じる〉

判決文によれば、事件のあらましはこうだ。

2015年の6月14日午前10時ごろ、60代の女性が飼い犬のミニチュアダックスフントを連れて散歩に出た。

最初はおとなしく散歩していたダックスフントだが、交差点向こう側から、別の女性に連れられた柴犬がやってくるのを目にすると、急に興奮して吠え始めた。

柴犬を連れた女性は交差点を左折したが、ダックスフントは後を追い猛然と駆け出す。急にリードを引っ張られた飼い主女性が「あっ」と声をあげた瞬間には、リードは女性の手を離れ、ダックスフントは一目散に柴犬めがけて駆けていった。

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ちょうど同じころ、曲がり角の先からは、同市内に住む40代会社員の男性が時速10㎞程度のスピードで交差点方向に向かってランニングしていた。

男性は、眼の前を歩く柴犬を連れた女性を避けるため右にずれる。その瞬間、男性の足元に、柴犬を追いかけて角を曲がってきたダックスフントが猛スピードで駆け込んでくる。

女性を避けることに意識を取られていた男性は、驚きのあまり「うわっ」と声をあげる。接触を避けようとするも、とっさのことに足がもつれ、つんのめってしまう。男性は身体のバランスを崩して転倒した。

事故を目撃していた近隣住人が言う。

「男性はそのままそばの側溝に落ちて、両手を強く突いたんでしょう。手首を押さえながら相当痛がっていました。起き上がって、飼い主の女性に大声で怒っているところに警察官がきて、話し合いになっていました」

 

飼い主の女性は警察官から事情聴取を受け、被害男性は救急車で病院に搬送。合計9日間の入院を余儀なくされた。

その後、男性は右手首の複雑骨折と、その後遺障害に対する損害賠償を求め、飼い主の女性に対し3948万円の支払いを求める訴訟を大阪地裁に訴え出た。

結果、大阪地裁が飼い主の女性の責任を認め、1284万円の賠償命令が下ったのである。

数ある賠償項目のうち、一番高額になったのが「逸失利益」の867万円だ。裁判所は、ケガで男性の右手首関節の可動域が狭まったとして、後遺障害を認定。

それによる男性の労働上の損失を算出した。一般に裁判で用いられる労働年齢の67歳までの分を合計した金額が支払われるため、これほどの高額になったのだ。