金正恩が訪中時、習近平に思わず漏らした「トランプへの本音」が判明

「あの男と対立したら…」
近藤 大介 プロフィール

中国が後ろ盾になってくれれば、たとえトランプ大統領と「決裂」したとしても、即刻戦争となったり、空爆を受けるリスクは激減する。

ランチの席で金委員長は、習主席に重ねて経済面でも弱音ともとれるお願いを連発したはずだ。

「中国が独自に行っている経済制裁を、直ちに解除してほしい」

「トランプを説得し、国連の経済制裁も解除してほしい」

「来月から種蒔きの時節なので、化学肥料の協力(援助)を頼みたい」

 

次はロシアにお願いか

実際、北朝鮮ではこのところ経済制裁の影響が、ボディブローのように利いてきている。ガソリン不足によって、一般車もタクシーも平壌からほとんど消え、電気も一日に3時間しかつかない。この冬は凍死者や餓死者が続出した。

中でも、最も打撃を与えたのが、北朝鮮の貿易の9割を占めていた中国による制裁だった。石炭、天然ガス、繊維製品などを立て続けに禁輸し、ついには中朝の合弁会社まで解消させてしまった。

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このうち一部を習主席は解いた可能性がある。

折りしも3月22日から23日にかけて、トランプ大統領から「貿易戦争」を布告されたことで、習主席はメラメラと怒りを燃やしているからだ。崔天凱駐米大使は「We will fight!」と宣言したほどだ。

米国との貿易戦争が始まって以降、中国では急速に「北朝鮮屏風論」が復活している。すなわち、中国が米国に対抗していくには、北朝鮮を「屏風」として利用するべきだという毛沢東時代からの伝統的な考え方だ。

今回、習主席は30歳も年下の金委員長を、まるで息子のように感じた部分があったのではなかったか。なぜなら、二人にはあまりに共通点が多いからだ。

二世指導者であること、「建国の父」(毛沢東主席と金日成主席)を尊敬し真似ていること、この上なくプライドが高いこと、軍事力拡大に精力を傾けていること、独裁的な政治スタイルで半永久政権を目指していること……。それに、妻が元国民的歌手であることや、体型まで似ている。

両首脳は5年余りにわたっていがみ合っていたが、今後は金委員長が「頻繁に会おう」と提案したように、「雨降って地固まる」蜜月関係を築く予感がする。

4月27日に文在寅大統領との南北首脳会談を確定させた金正恩委員長が、次に画策するのは、間違いなく、プーチン・ロシア大統領との早期の首脳会談だ。

ロシアは、3月4日に英国で起こったロシア人の元スパイ暗殺未遂事件を巡って、欧米と「冷戦状態」に陥っている。同月18日に再選されたプーチン大統領としては、北朝鮮カードを使って、トランプ政権に揺さぶりをかけるだろう。

問題は、すっかり蚊帳の外に置かれた日本である。安倍首相が密かに画策している「6月電撃訪朝」は、実現するのか?

近藤大介(こんどう・だいすけ)
中国・朝鮮半島取材をライフワークとする。『大国の暴走』(渡部恒雄氏、小泉悠氏との共著)、『金正恩の正体』など24冊の著書がある

「週刊現代」2018年4月14日号より