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手術法、抗がん剤、放射線治療…生存率をアップさせた「画期的発明」

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「分子標的薬」の誕生

治る「がん」、治らない「がん」を知るためには、最新の生存率を見極める必要がある。

当然のことながら、がんの生存率は、診断を受けた性別や年齢などによって大きく左右される。「若い人のほうが助かりやすい」「女性のほうが生存率が高い」といった情報を耳にしたことがある方もいるだろう。

ページ末の表をご覧いただきたい。この表は、がんの部位、年齢、性別、がんのステージごとに、生存率をまとめたものである。

全国がんセンター協議会が今年2月に更新した最新の生存率調査のデータから、本誌が410パターンの5年生存率を抽出('07~'09年の診断のもの)。

これによって、年齢、性別、診断時のステージなど、もっとも患者の状況に近い生存率を知ることができる。

たとえば、60代の男性が、ステージⅡの胃がんだと診断されたとしよう。その場合、生存率は、74.4%。70代の男性がステージⅣの直腸がんと診断された場合には、生存率は20.6%だ。

では、最新の生存率、そして前章でも紹介した過去20年での変化について、それぞれのがんに即して見ていこう。その中で、どのような技術、発明によって生存率が上がってきたかも明らかになってくる。

 

まずは、最もメジャーながんの一つ、肺がん。発見しにくく、進行すると助かる可能性がガクンと低くなる。60代男性の場合、ステージⅡであれば生存率54.9%だが、ステージⅢになると一気に23.2%まで低下する。

だが、前章でも触れた通り、肺がんの生存率では大きく改善が見られた。

慶應大学病院・腫瘍センター特任教授の西原広史氏が語る。

「肺がんや乳がんは、ある特定の遺伝子の異常にピンポイントで効果を持つ『分子標的薬』の誕生によって、治療に大きな変化が起きました。

個人の遺伝子の種類などに合わせて、より効果的な治療を施す、いわゆる『プレシジョン・メディシン』ができるようになった。このことで生存率が上がりました。肺がんの場合、『EGFR阻害薬』という薬が代表的です」

もともと手術がしやすいため肺がんより生存率が高いものの、こうしたプレシジョン・メディシンが発達しなかったのが、胃がん

原因となる遺伝子が見つからず、分子標的薬を開発できていない。ステージⅡではやや生存率が上がっているが、ほかは横ばいだ。

直腸がん結腸がんはどうか(両者を合わせたのが、大腸がん)。直腸がん、結腸がんともに、ステージⅡ~Ⅲで大きく生存率を伸ばしている。直腸がんでは、10%以上の伸びだ。

国立がん研究センターの検診研究部長・中山富雄氏が解説する。

「ステージⅡ~Ⅲは、手術、薬物治療、放射線治療などを組み合わせる『集学的治療』を行います。

その中でも、抗がん剤の進化が大きく、『ゼローダ』をメインに、ほかの薬を併用するという治療法が確立し、一般化してきたことが大きく影響したのだと思います」

光仁会第一病院院長で東京医科歯科大学名誉教授の杉原健一氏はこう考える。

「大腸がんの標準的な手術法が全国に普及したということが大きいでしょう。小さな病院で大腸がんの手術を行わなくなったこともひとつの要因。

患者さんが大病院に集約され、医師が経験を積んで技術が向上したのが奏功していると考えられます。また、CT機器の精度がよくなり、早期に診断ができるようになったことも影響しています」