「SNS映え」で観光客も増えた地方が、活性化しないのはなぜ…?

地方ブームが終わる前に何ができるか
貞包 英之 プロフィール

「関係人口」と消費者の集団

しかし現在のブームが、地方に実際に何をできたかといえば、心もとない。地域おこしの成功事例がさかんに語られる。だが行政や一部の自営業者の利益になったことを除けば、それが地方の暮らしの構造を変える何を達成したかは疑わしい。

その一つの証拠になるのが、地方への移住の進まなさである。

たしかに近頃、地方への移住希望者が多いことが話題になっている。総務省がおこなった2017年の調査でも、都市住民のうち男性で36.1%、女性で25.0%が農山漁村に移住してもよいと答え、20代では37.9%ととくに若年層でその希望が高かった(『「田園回帰」に関する調査研究中間報告書』)。

しかしそれはあくまで希望であり、実際に地方への移住を予定していると明確に答えた者は全体で0.8%と希望者を大きく下回り、20代でも1.3%に留まった。

〔PHOTO〕iStock

「地域おこし隊」の定着率が多いとはいえないことも気にかかる。定住促進を目標に2009年に始まった地域おこし隊でも、2017年の調査(総務省)によれば、任期終了後に活動自治体に留まった者は48.2%、近隣自治体を加えても62.6%に限られた。

こうして地方への移住・定住が進まないなかで、官や民で流行り言葉となりつつあるのが、「交流人口」、さらに「関係人口」というキーワードである。

帰省や観光やビジネスのために訪れる「交流人口」、加えて地域の商品を買ったりファンとなったりする「関係人口」――それは既成の制度や共同体から離れた「ソーシャル」な関わりを持つ人口のことだろう――が、「定住人口」の代わりに地域おこしの成果として注目され始めている。

ただし冷静にみれば、それにどこまで意味があるかには疑問が残る。

 

とくに「関係人口」とは、突き詰めれば、ある地域の産物やそこでの経験を買う「消費者集団」につきるのではないか。

だとすればこうした集団が、現在の消費の枠組みをどこまで変えられるかは曖昧である。

まず東京を中心に発信、発送される商品や情報の回路は巨大であり、それを本当に組み替えていくためには、生活の細部まで見直すかなりの厳しさが必要になる。

さらに現在の人口や所得の比率では、その「消費集団」の多くは、東京を中心とした大都市に暮らしている。そのため「関係人口」を増やすことは、大都市の感性によって地方を染め上げることにつながりかねない。

その証拠になるのが、「SNS映え」という他者からの承認に一喜一憂する現在の地方の姿であり、それは移り気な大都市の住人の歓心を買うための、ときには財政を無視した競争へと地方を追いやりつつある。