1000円カットQBハウスの上場が「期待外れの幕開け」となった理由

投資家にとってどこが問題だったのか
加谷 珪一 プロフィール

LBOは投資先の資産や収益を担保に銀行から資金を借り入れる手法なので、投資ファンドは株式を取得する部分のリスクだけを負えばよい。買収資金の大半は銀行が提供していることから、銀行は厳しい条件を設定せざるを得ない。

また投資ファンド側にも事情がある。上場申請時点で、同社の株式の約9割以上を投資ファンドのインテグラルが保有しており、同社は完全に投資ファンドの所有物だった。しかも、インテグラルは上場と同時に保有株式の大半を売却している。

せっかく上場したにもかかわらず、同社が新規の資金調達を実施しなかったのは、投資ファンドによる売却を最優先したからだろう。うがった見方をすれば、インテグラルは今後の同社の事業展開をあまり楽観視しておらず、株式の売却を急いだとも読める。もしそうなら、上場後の株価が冴えないのは当然の結果といえるかもしれない。

官による規制に苦戦

言い方は厳しいかもしれないが、同社は投資ファンドと銀行にがんじがらめにされた企業ということになる。

しかしながら、この会社をファンドのオモチャにされた企業として一刀両断にしてしまうのは、少々拙速であると筆者は考える。10分1000円という画期的なサービスを開発していながら、なぜ今回の上場が、一般投資家にとって魅力のないスキームになってしまったのか、少しばかり考察が必要だ。

 

同社は今後の成長戦略のひとつとして海外展開を掲げているが、海外市場において、同社は特別に競争力のある企業ではない。海外市場では、洗髪なしという理髪店のサービスは特に珍しくないことがその理由だが、同社があえて海外進出を進めてきたことには、国内の特殊事情が関係している。それは官による規制である。

日本では理髪店が洗髪したり髭を剃ったりするのは当たり前のサービスだが、顧客の中には、安い料金でカットだけをして欲しいという人も多い。創業者である小西氏はここに目をつけ、10分1000円のヘアカット事業を展開してきた。

だが、こうした新しい事業の前に立ちはだかったのが規制のカベである。

QBハウスのようなサービスが増えると、既存の理髪店は大打撃を受ける。このため業界団体の一部が猛反発し、いくつかの自治体では条例を制定。洗髪台の設置を義務付けるようになった。

2015年時点で、洗髪台の設置を義務付けている自治体は30を超えている。仮に洗髪を行わないにしても、コスト勝負の同社にとって洗髪台を設置することは収益の低下につながる。こうした規制の存在が同社の店舗展開に与えた影響は大きいだろう。