「ユダヤ系ロビー団体」巨大イベントで見えた、日米の不安すぎる未来

日本政府の「頼みの綱」が嫌われていた
海野 素央 プロフィール

また米メディアによれば、クシュナー一族が経営する不動産開発会社「クシュナー・カンパニーズ」は巨額の債務を抱えています。そこに目をつけたイスラエル、アラブ首長国連邦、中国、メキシコが彼に接近し、操ろうとしたとも報じられているのです。

はるばるシカゴから参加したというバーン・ギデオン(81)さんも、クシュナー氏に対しては否定的でした。

「クシュナーは、ロシアとも関係があると疑われています。道徳心に欠けているし、疑わしい人物です」

彼の妻シーラ(78)さんも「そうよ、クシュナーは怪しい」と、夫のバーンさんに同意していました。

 

クシュナー氏は、いわゆる「ロシアゲート」疑惑で、ロシア人女性弁護士や銀行家と面談したことが判明しています。前述の国々に加えて、彼がロシアからも融資を受けようとしたのではないかと疑われるのも、無理はありません。

今秋行われる中間選挙をテーマとする分科会で、筆者は隣に座った中年男性にもクシュナー氏について聞いてみました。男性は「ニュージャージー州から来ました。クシュナーは、うちの州の出身なんですよ」と言った後、強い口調でこう続けました。

「私はクシュナー本人のことは知りませんが、彼の父親とは面識があります。でもクシュナーについては、何も言いたくないですね」

もう一人分科会で話した男性は、黒いスーツと帽子、長いあごひげという「正統派」ユダヤ教徒のいでたちでした。その彼も厳しい表情を浮かべ、ややぶっきらぼうにこう返事しました。

「あなたは彼(クシュナー氏)について意見があるようですね。私たちにも、いろいろな意見がありますよ」

この二人がクシュナー氏のことをどう考えているか、はっきりとはわかりませんでした。もしかすると、彼にシンパシーを感じているがゆえに、コメントを控えようとしたのかもしれません。

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イスラエルと日本の「共通点」

日本人として今回のAIPAC年次総会で最も興味深かったのが、米下院議員による、とあるパネルディスカッションです。入口には「メディア関係者立ち入り禁止」と書かれた張り紙があり、スタッフが参加者1人ひとりのバッジにスキャナーを当て、参加登録を済ませているか確認する厳重ぶりでした。

パネラーは、下院軍事委員会に所属するトレント・ケリー議員(共和党・ミシシッピ州第1選挙区選出)、ステファニー・マーフィー議員(民主党・フロリダ州第7選挙区選出)、ジミー・パネッタ議員(民主党・カリフォルニア州第20選挙区選出)、下院外交委員会のブライアン・マスト議員(共和党・フロリダ州第18選挙区選出)の4人。彼らは、米下院における「イスラエル応援団」として知られています。

ホーチミン市で生まれ、その後米国に移住したベトナム系のマーフィー議員は、民主党の議員ではありますが、イスラエル首都のエルサレム移転について「誰も異論を唱えることはできない」と強い調子で支持表明し、喝采を浴びていました。

そんな会場に少し緊張感が走ったのが、質疑応答の時のことです。参加者の男性から、「あなたがた政治家は、本当にイスラエルの安全を確保する気があるのか。一人ひとりに聞きたい」と、まるで「踏み絵」を踏ませるような質問が飛び出したのです。