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「ユダヤ系ロビー団体」巨大イベントで見えた、日米の不安すぎる未来

日本政府の「頼みの綱」が嫌われていた

熱狂的トランプ支持者もいる

「AIPAC(エイパック)」という組織をご存知でしょうか。正式名称は「米国・イスラエル公共問題委員会」。1963年設立、現在10万人以上の会員を擁し、全米に17の事務所を構える、米国最大のユダヤ系ロビー団体です。

3月4日から6日、米国の首都ワシントンでこのAIPACの年次総会が開催されました。筆者は研究者としてこの総会に参加し、会場にいるユダヤ教徒を対象に、トランプ政権に関するインタビュー調査を行いました。

会場は、ホワイトハウスにほど近いワシントン・コンベンションセンター。会期中、周辺には多くの警察官が配備され、交通規制もなされるなど、厳重な警備体制が敷かれていました。今年の参加者は、約1万9000人にのぼります。

壇上では、イスラエルのネタニヤフ首相、マイク・ペンス米副大統領、ニッキー・ヘイリー米国連大使、ミッチ・マコネル院内総務、チャック・シューマー院内総務、ケビン・マッカーシー院内総務、ナンシー・ペロシ院内総務、上院軍事委員会に所属するマルコ・ルビオ議員(共和党・フロリダ州)とトム・コットン議員(共和党・アーカンソー州)など、政権や議会の大物が相次いで演説を行い、親イスラエルを訴えていました。

AIPAC総会で話すイスラエルのネタニヤフ首相(Photo by gettyimages)

ハンガリー系ユダヤ人で、「キッパ」というユダヤ教徒独特の小さな帽子をかぶって年次総会に参加したアンドリュー・ファーカス(67)さんは、まず筆者にこう語りました。

「私はトランプ大統領を支持していませんが、イスラエルの首都を(テルアビブから)エルサレムに移転することには賛成です」

既報の通り、トランプ大統領は在イスラエル米国大使館をエルサレムに移転すると宣言し、同地をイスラエルの「首都」と認定しています。会場では、演説者が「エルサレムへの首都移転」を主張するたび、観客総立ちの盛大な拍手が起こっていました。

他の参加者に聞いてみても、ファーカスさんと同じく、「反トランプだけど、エルサレム首都移転政策は支持する」という人が少なくありませんでした。

ユダヤ人には民主党支持者が比較的多いとされますが、会場にはトランプ支持者ももちろんいます。赤ちゃんに「ロビー活動のトレーニング中です」と書かれたよだれ掛けをつけ、演説に耳を傾けていた母親は、熱狂的なトランプ支持者でした。ニューヨーク市ブルックリン在住だそうで、年の頃は30代半ばでしょうか。

「AIPACの活動家には、反トランプ派が多いんです。でも、『ロシアゲート』はマスコミのでっち上げ。私は報道を信じていません。トランプ大統領はメディアの犠牲者です」

 

だが、クシュナーには厳しい

トランプ大統領本人や政権については様々な見方がある一方、会場のユダヤ教徒たちが一様に厳しい見方を示したのが、トランプ大統領の娘・イバンカ氏の夫にして、大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏についてです。

クシュナー氏とイバンカ氏は、これまで外務省と安倍政権がアプローチを繰り返し、トランプ政権と日本政府の重要なコネクションとなってきました。

クシュナー氏はユダヤ教徒であることが知られています。これをもって、日本国内でもアメリカウォッチャーの間に「ユダヤ系米国人はクシュナー氏を絶対に守る」とみる意見がありますが、意外にもそうではなさそうなのです。

前出のファーカスさんはこう語ります。

「クシュナーには、大統領上級顧問の資格はないと思います。外交経験も乏しいし、自分のビジネスでも弱い立場に置かれている。彼の会社は外国から融資を受けているそうですからね」

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クシュナー氏は、米連邦捜査局(FBI)による身元審査を受けずに大統領上級顧問に就任していたことが判明し、今年2月に「大統領日報(PDB)」といった最高機密情報へのアクセス権限を失っています。閣議の際も、以前はクシュナー氏がトランプ大統領の真後ろに座っていましたが、最近は姿が見えません。