日本の官邸とは異なり、訪問者記録は1日保存ではもちろんない。
シークレットサービス(国土安全保障省の管轄)が身元チェックなどを行うため、訪問者記録は連邦政府機関であるシークレットサービスが保有している。
しかし、ホワイトハウスの記録とする判例もあり、どこの保有記録かに争いがあった。
2007年にホワイトハウスの訪問者記録の公開を求める訴訟が起こされたが、2009年のオバマ政権になってから和解し、自発的にホワイトハウスが訪問者記録をホームページで公表されることになった。
90~120日後に記録が公表され、オバマ政権の間、ホワイトハウスのホームページには、最終的に約599万件のデータが公開されていた。
記録とは訪問者が誰であるか、予約の日時、訪問者がどこに訪問をしたか、訪問者に関する説明など28項目のデータセットだ。
このデータから、2009年1月から2015年10月にグーグルのロビイストが128回以上、グーグルのスタッフが427回集まっていたことがわかり、他のIT企業とは異なる「密接な関係」が明らかにされた。
そもそも記録がない日本とは大違い
しかし、トランプ政権になり、このオバマ政権時代のデータセットをすべて非公開にし、以後、訪問者記録は非公開になっている。
理由は、国家安全保障とプライバシーのリスクがあるから。この決定に対して、情報公開訴訟がNGOにより起こされ、訪問者記録が情報公開請求の対象となる「記録」であることの確認と、公開を求めて係争されている。
少なくとも、オバマ政権での訪問者記録の公開によって、国家安全保障とプライバシーのリスクがなかったことは明らかなので、非公開にする理由もないし、請求対象の記録とすべきであるのは、シークレットサービスの業務そのものだからというのが、NGO側の主張だ。
一方のホワイトハウスは、訪問者記録は「記録」ではないとし、情報自由法の適用除外としようとしている。
また、この訴訟ではホワイトハウスだけでなく、トランプ大統領のフロリダにある別荘である「マー・ア・ラゴ」の訪問者記録の公開も求めている。

連邦巡回裁判所から、マー・ア・ラゴの訪問者記録の公開を命じられたが期限までに応じず、その後、訪問者記録がないとシークレットサービスが主張し、問題になっている。
これが問題になるのは、政府が誰の影響を受けているかを知る権利があると考えられているからだ。
まだ係争しているが、少なくともホワイトハウスの訪問者記録は残され、オバマ政権下では8年間で約599万件のデータがあったので、同じような規模で訪問者が記録され続けていると思われる。
争いはあるにしても、記録がないという日本の状況と比較すると雲泥の差だ。
公文書管理法は、政府の諸活動の説明責任を行政文書によって果たすこと求め、情報公開法も同様だ。
その「政府の諸活動」の記録として首相や政務三役を含む日程表や官邸への入館記録をまったく重視しない今の日本の枠組みは、さながら権力や権限を持つ者の活動は記録しないことが当然、ということを意味するのだろうか。
自らの行動が政府の活動であるという自覚のないことが、日程表などをすぐに廃棄するという結果に現れているなら、それはもはや「社会的悲劇」というほかない。