顔に泥を塗り続けられた習近平が金正恩を迎え入れた「真の狙い」

「千年の宿敵」とまで言われたのに…
李 英和 プロフィール

まだ国内に説明はできていない

北朝鮮は「苦難の行軍」と称し、核開発のせいで大飢饉を招いた。それが今になって突然、独裁者の「命乞い」で核放棄を表明する。「核爆風の威力で吹き飛ばす」と大言壮語した「千年の宿敵」=中国に膝を屈して助命を嘆願する。

核開発と経済再建の「並進」から核放棄への「転進」。金正恩はごく少数の最側近と密室で、この180度の方針転換を決めた。

金正恩は今、大多数の幹部と国民を相手に、この世紀の詐欺劇を言い逃れる屁理屈をひねり出すのに四苦八苦している。

その証拠に、本稿執筆時の3月30日現在でも、北朝鮮は金正恩の肉声や労働新聞の社説で「非核化」と「米朝首脳会談」について一言もない。

 

北朝鮮が沈黙する中、韓国政府は30年経過した外交文書を3月30日に初公開した。

それには、北朝鮮が1987年にアメリカに手渡した公式文書が含まれる。当時の金日成は、旧ソ連のゴルバチョフ大統領を仲介役に立て、レーガン大統領へ手渡したものだ。

同文書の核心部分は「南北連邦制中立国」構想だ。朝鮮半島から外国軍隊を撤退させて非核化する。米韓と中朝がそれぞれ安保条約を破棄する。そうして米中両大国の緩衝地帯として中立国を新憲法で宣言する――。

この外交安保政策の新構想は、1民族・1国家・2政府・2制度の「高麗連邦共和国」構想の一環だ。

筆者は2年前、北朝鮮の核開発を通じた生き残り戦略を「核武装中立構想」と呼んだ(「反中国の怪物」になった金正恩」『Voice』2016年5月号)。

核ミサイルで北東アジアの安保秩序を強引に塗り替え、米中両大国を相手に喧嘩を売ることで両大国との「等距離外交」を実現して生存空間を広げる戦力構想と見立てた。

この新たな「生存空間」が南北連邦制だ。もちろん、北朝鮮が武力統一の野望を捨て去るではない。あくまで「完全赤化統一」への過渡的な段階である。

先述したように、北朝鮮の貧弱な核武装の道は所詮「行き止まりの袋小路」だった。それが今、とうとう海上封鎖と武力行使の厚い壁に突き当たった。北朝鮮は今度、それを逆手に取る腹積もりのようだ。

核ミサイルで米中両大国に喧嘩を売る「核武装中立」から、核放棄で米中両大国に恩を売る「非核化中立」へと転進を図る。北朝鮮がその先に見据えるものに変わりはない。南北連邦制中立国の樹立構想がそれである。

中朝首脳会談に続いて、4月27日には南北首脳会談の開催が予定されている。金正恩がそこで「連邦制」の曲玉をどう投げ込んでくるか。

30年前のゴルバチョフに代わり、トランプへの仲介役を果たすのは習近平なのか、それとも文在寅なのか。観戦の注目点はここにある。