アパホテルが「一泊3万円」の高額路線でも驚異の成長を続ける理由

高いなと思った瞬間、あなたの負けです
三戸 政和 プロフィール

価格統制を壊す「ダイナミックプライシング」

さて、この「ダイナミックプライシング」は、新しい技術の発展とともに、これから様々なジャンルに導入されるだろう。

価格の設定がよくわからない代表格が「コメの価格」である。戦時中の食料管理法からはじまり、戦後になれば政府買取のコメ価格に所得補償を入れた。これは、コメを作るコストから積み上げた価格設定で、「これだけコストが掛かっているのだから、この値段で」という設定方式である。しかも、そのコストを算出する際には、都市部で働く生産性の高い労働者と同じ人件費などを基準に設定していたことから、「都市部の給与が上がればコメの値段も上がる」という仕組みとなっていたのである。

Photo by iStock

これは、都市部と農村部の所得均衡を目指した政策であり、一概に「悪い」ともいえないのだが、結果として、日本人は「コメは高いから」と食べなくなり、コメ文化の希薄化を加速させることとなった。今さら中途半端な自由化を打ち出したり、コメを食べる運動をしても時すでに遅し。長期的に見れば、規制に首を締められたのである。

このような「統制価格の罠」から飛び出すためには、農家が自分で顧客を創造しなければいけない。顧客を独自に創造できるなら、その顧客のニーズに応じて価格をつける(変動させる)ことができるからだ。

30年前なら農家が自分で顧客を創造することは難しかったかもしれないが、テクノロジーが発展した今なら、容易に可能だ。たとえば、「八面六臂」「ポケットマルシェ」などのベンチャーはネットを駆使して生産者の顧客創造をサポートしている。

これは、農協の買取や市場を通さず、生産者と消費者を直接つなぐサービスだ。ネットに農産物をアップし、時々の需要に応じて値段を変えていく(過剰な仲介業者をはぶけるので、そもそもの値段が安くなる)。

生産者は、一番高く買ってくれる人に先に納品すればよく、消費者もその日の自分に一番合うものを自分の望む価格で購入することができる。また、消費動向がオンタイムで分かれば、過剰な収穫をせず、消費量にあった収穫が可能にもなってくるだろう。

このサービスが浸透し、オンタイムで膨大な生産者と消費者が繋がっていけば、農産物でもダイナミックプライシングのような価格設定が可能になるだろう。

アパホテルの「好調」が教えてくれるのは、「変化にいち早く対応できる企業は強い」という極めてシンプルな事実だ。「アパホテル一室3万円」と聞いた時に、どんな反応を示すか。そこであなたの「ビジネス力」が見抜かれるということに、気づいた方がいいだろう。

著者の初の単行本が発売されました。ご購読いただければ幸いです