中国人も韓国人も「日本の桜」が気になって仕方がない理由

ソメイヨシノはなぜ特別なのか?
青山 潤三 プロフィール

それでは、いわゆるサクラ(狭義のサクラ属の植物)は、日本に何種あるのでしょうか? これも研究者ごとに意見が異なりますが、最も広く捉えると、ヤマザクラ、エドヒガン、チョウジザクラ、マメザクラ、ミヤマザクラの5種です(9種とする見解もあります)。

しかしあるサイトでは「覚えておきたい代表的なサクラの4つの種類」をソメイヨシノ、シダレザクラ、ヤエザクラ、カンザクラとしていました。上記の5種とは全然違いますね。

どういうことかというと、上記の5種は学術的な「種」である一方、下記の4つは人目を惹く(しかし生物学的にはあまり意味のない)特徴に対して名付けられた「品種」なのです。

中国・秦嶺山脈で見かけた野生のサクラ

とはいえ、一般的には「桜」といえばソメイヨシノを思い浮かべるでしょう。中国人が言う「日本櫻花」ももちろんソメイヨシノのこと。漢字で書くと「染井吉野」、東京·駒込の染井で作出された吉野桜(奈良県吉野山産のヤマザクラ)という意味です。

後ほど詳しく触れますが、日本人は、野生種から新たに有用な動植物を作り出すことがあまり得意ではありません。そんな中、ソメイヨシノは数少ない「純日本製」の植物といえます。

本州から朝鮮半島にかけて分布するエドヒガンというサクラと、日本のほぼ全土にみられるヤマザクラの仲間(ヤマザクラ、カスミザクラ、オオヤマザクラ、オオシマザクラ)のうち、伊豆諸島周辺産のオオシマザクラとの交雑により、ソメイヨシノは生まれたのです(このことはDNA解析により確定しています)。

どのように交雑したかは、植木市場で両者を栽培していたところ、いつの間にか自然交配した、あるいは植木職人が意図的に交配させたなど、諸説あります。

葉が出る前に花が咲くエドヒガンと、大きな花を咲かせるオオシマザクラの特徴を併せ持ち、ひたすら明るく豪華絢爛なソメイヨシノは、爆発的な人気で全国いたるところに広がりました。これがわずか150年ほど前、江戸時代末期のことと考えられているのです。

 

「韓国起源」ではない根拠

ちなみに、ソメイヨシノの一方の親であるオオシマザクラは、日本の伊豆諸島に固有分布するサクラなので、前述した「ソメイヨシノ韓国起源説」は成り立ちません。

しかしオオシマザクラは、種の定義を広くとると、ヤマザクラの一種ということになります。そして、ヤマザクラは4つの変種(通常それぞれを独立種とすることが多い)からなり、そのうちのカスミザクラは朝鮮半島にも普遍的に分布しています。

オオシマザクラとカスミザクラは非常に近縁で、同一種とみなされることもあります。従って、韓国でエドヒガンとカスミザクラを交配した品種が作られたなら、それは「ソメイヨシノそっくり」ということも大いにありえるでしょう。

ただいずれにせよ、仮にオオシマザクラとカスミザクラを「同じ種」であると考えても、DNA解析によって、現在普及しているソメイヨシノは伊豆諸島産の集団が親であるという結果が出ています。ですから、仮に韓国で独自に作られたソメイヨシノ(のそっくりさん)があるとしても、それはソメイヨシノそのものではありません。

ソメイヨシノとほとんど同じ品種が、日本でソメイヨシノが作出されるより前から韓国に存在していた、という可能性はあるかもしれません。しかし、それは普及しませんでした。