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新入社員に伝えたい、高橋まつりさん事件がこの社会に問いかけたもの

体も心も、壊れるときは壊れてしまう

また、4月がくる。3年前の春、高橋まつりさんは、胸を躍らせて社会人になったはずだった。2015年12月25日、彼女は投身自殺をした。その後、過労の末の自殺と労災認定をされた。新入社員が入ってくる季節、就活を始める季節だからこそ、もう一度まつりさんの事件が社会に問いかけた問題を見直したい。

まつりさんの報道の衝撃

高橋まつりさんについてのニュースを見たときの衝撃を覚えている。前途洋洋に見える若い女性が……というショックもあったし、以前過労自殺を起こしている電通でまた?という驚きもあった。でも、もっとも目を引いたのは、彼女が遺していたTwitterの内容だった。

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私はまつりさんよりも年上だが、大学時代にGREEやMixiが立ち上がり、その後FacebookやTwitterが主流になっていく中で、SNSが常に身近にある世代の走りだと思う。そのSNS世代の私たちは、SNS上で、「死にそう」と言うこともあるし、忙しい自慢、寝てない自慢みたいなこともしたことがある。時には本当の自分とは違うキャラで毒舌を履いたり、恋愛ネタを投下したりもする。

そういう世代の、日常的なコミュニケーションの一部であるTwitter。高橋まつりさんのツイートは、自分や、周りの同級生や後輩が今日や昨日つぶやいている内容でもおかしくないような生々しいものであった。

 
まつり‏ @matsuririri 2015年11月3日
生きるために働いているのか、働くために生きているのか分からなくなってからが人生。
 
まつり‏ @matsuririri 2015年11月12日
がんばれると思ってたのに予想外に早くつぶれてしまって自己嫌悪だな。

ある意味で、辛さをブラックジョークに変換しているようにも見え、逆に「大丈夫そう」に感じられる、まつりさんの発信。その内容をつぶやいていた彼女がもうこの世にいないということが信じがたかった。

彼女の友人や同世代にも大きな衝撃をもたらしているのではないかと思い、まずは広告業界に勤める友人や後輩に「大丈夫?」とメッセージを送った。一方で、私は会社員としての仕事や家庭の事情で、本件の記者会見等には参加できず、ジャーナリストとして取材に走り出すことができていなかった。

その後の怒濤のように沸き上がった報道、電通や長時間労働是正に向けた国を挙げての動きについて、茫然と、一読者・一視聴者として新聞やテレビを眺めていた。

しかし、彼女のTwitterを読み返すうちに、その内容を身近に生々しく感じたからこそ、同じような経験をしている人が今も苦しんでいるのではないかと思い、私はやがて、別方向を向かって取材をはじめた。

長時間労働よりもどちらかというとハラスメントについて、それも電通やまつりさんの周辺取材をするのではなく、今、同じような被害に遭っているひとがいるのなら、その人たちの声を聞かなくてはと思ったのだ。