財務省・佐川前理財局長が、これからたどる「苦難の道」

それでも、命だけは捨てないで
佐藤 優 プロフィール

佐藤:そこで「検事さんがあんまりすごい剣幕だから、ついさっき思いました」とは言えないでしょ。

「よーく考えてくださいね。実行した時にもう、心の奥底で『何かやましいことをしている』と思っていたんじゃないですか? 明確には意識していなくても、深層心理では。そうでなければ、何も悪いことをしていないのに、今になって悪いと思うはずがないでしょう?」

こういうのを「情理ある説得」と言うんです。「情理ある説得」と「不眠不休の努力」で、最終的には全面自供になるというのが、だいたいあの世界のパターンなんですね。

「情理ある説得」は今のような理詰めの話。「不眠不休の努力」というのは、ほとんど睡眠時間を与えずに朝から晩まで取り調べをする。情理ある説得と不眠不休の努力で20日間ほど攻防戦が行われる。検察に身柄を持っていかれるとこういうことになります。

邦丸:…………。

 

検察は、ムダなことはしない

佐藤:逆に、「邦丸前長官、どうですか、あなたの思っていることを率直に全部おっしゃってください」と言われて、「やってないし、どんな指示もしていませんし、何も関係ありません」と答えて、検察が「はーい」と全部調書に書く。すんなりハンコも捺す。これ、何だと思いますか?

実は、逮捕状請求の準備なんです。こういう場合は、聴取を受けた他の人から「確かに指示を受けました」という調書をもう取ってある。その中で1人だけ違うことを言っていると、「こいつウソついてるから、早く身柄を拘束しなければいけないので逮捕状を出してください」ということになるんです。

言いたいことをそのまま言わせてくれたら、確実に逮捕されるということです。

邦丸:はあ〜。

佐藤:検察は言われたことそのままの調書なんて作らないですからね。あの人たちは目的のないことはしないですから。

邦丸:ちゃんとゴールが見えているんですね。

佐藤:スゴロクって、中山道と東海道に道が分かれていても、最後は京都三条大橋でアガリでしょ。それと同じように、どうやっても最後は大阪拘置所に行くスゴロクができている。そこに佐川さんは一歩足を踏み入れた。こんなふうに見ています。

邦丸:経験者は語る、ですね。いずれにしても、まだまだ続く話ですね。

佐藤:そうとう長く続きます。

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol.129(2018年3月28日配信)より