ジェフ・ベゾスの次の野望は「アマゾン・カー」の実現だった

アマゾン・エコーで驚いてはいけない
田中 道昭 プロフィール

ライバルのグーグルに足りないもの

たとえば筆者はアレクサにこう話しかけたことがある。

「アレクサ!……いや、なんでもない」。途中で何を頼もうか忘れてしまったのだ。「ボケ」たわけではなかったが、「ボケにはツッコミがほしい!」と思っていると、アレクサはこう答えた。

「お呼びでない。こりゃまた失礼いたしました!」

昭和の偉大なコメディアンである植木等のギャグが、時を経て2018年のアレクサから飛び出したことに、筆者は単なる機械やコンピューター以上の感情をアレクサに抱くこととなった。「おちゃめなアレクサは可愛い!」と。やはりツッコミの本質は愛情なのだ!

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妻も私と同じ感覚を抱いている。私が「アレクサ!」「アレクサ!」と粗暴に語りかけていると、妻に「もう少し優しく声をかけてあげてよ」と叱られてしまった。スマートスピーカーはその便利さ以上に家族の一人として、そこに居なくてはならない存在となる力を秘めている。人間の感覚とは不思議なものである。

アメリカ人のスマートスピーカー保有比率は16%、アマゾンエコーの同比率11%、グーグルホームの同比率4%と前者が約3倍のシェアを握っている。

筆者は植木等のギャグを駆使してくるなどその「遊び心」を掴んでいる点では、アマゾン・アレクサはグーグル・アシスタントをしのいでいるようにも感じた。

アマゾンは従来から利便性を追求し、顧客とフレンドリーな双方向関係を築こうとするカスタマーエクスペリエンスを重視する企業だ。対して「世界中の情報を整理し、世界中の人々が アクセスできて使えるようにすること」をミッションとするグーグルは、その技術の洗練さを求める性質がある。

アレクサが〝ファミリー″として認められれば、「日用品」や「食品」、「音楽」「映画」、そして今回のテーマの「ファッション」に至るまで、ありとあらゆる買い物の入り口をアマゾンが押さえることとなるのだ。

そしてアマゾンがグーグルとの攻防を有利に進めているのは、アレクサ搭載家電やアプリの数で圧倒するばかりでなく、これまでECで馴染んできたアマゾンで買い物することへの安心感なのである。

商品のレーティングやレビューなど、ECでの長年にわたって培われた優れた仕組みがあるからこそ、「ただ話しかけるだけ」でより安心して注文することができることに注目すべきだろう。

そんなアレクサではあるが、正直言うと日本語の認識能力はまだかなり低い。筆者としては珍しくかなり「大人の対応」をすることでようやく何とか受け答えが成立しているというのが現状だ。アレクサのプラットフォームとしての力は絶大ではあるが、この点だけ見れば日本勢もまだまだ挽回の時間は残されていると言えよう。

アマゾンが次に狙うのは…

CESで目撃したアマゾンの戦略はこれだけに留まらない。

セッションで公開された調査結果のうち、スマートスピーカーの利用者が「次にどこで使用したいか」を尋ねる質問で、最も多かった回答は「車の中」だった。これはスマートスピーカーがスマートホームからやがては「スマートカー」に搭載されるのが自然な流れであることを物語っているものだ。

そしてアマゾンはスマートカーの覇権を握ろうと野心的に水面下で準備を進めていると筆者は見ている。それは単にアレクサを自動車メーカーに売り込むことではなく、アマゾン自身が自動車メーカーとして台頭する可能性も含んでいる。

 

自動車産業について今回のCESで実感したのは、完全自動運転がすでに業界全体のテーマに躍り出ていることだ。

日本で意識されているのは「手始めに人間が運転する車に自動運転の機能を取り入れよう」、あるいは「高速道路のような道路は自動運転にして、場合によっては人間が運転できるようにしよう」という限定的自動運転であり、これは業界では完全自動運転に向けた「レベル3」の段階と位置付けられている。

ところが今年の1月には、こうしたプロセスを経ずに一挙に完全自動運転車へと移行すると強いメッセージを送るメーカーが現れた。米ゼネラル・モーターズ(GM)である。つまり「レベル3」をすっ飛ばして、「レベル4」を実現しようとしているのだ。

1月12日付の日本経済新聞でも報じられたが、GMは〝無人運転″の量産車を19年には実用化する方針だ。その運転席の画像は衝撃的でSF映画を彷彿とさせる。ハンドルなし、アクセルペダルも、ブレーキペダルもなし。GMはサンフランシスコやアリゾナで200台以上を使って走行実験を繰り返し、無人タクシーとしての実用化を目指しているという。

その後、米国では、ウーバーとテスラで死亡事故が相次いでいる。筆者としては、実用化を急ぐより、安全性を徹底する方向に業界全体として舵を切り直してほしいと願っているところだ。

完全自動運転を実現するには実証実験も含め、かなりのビッグデータと高度なAI技術の蓄積が必要だ。実はすでに様々な分野で完全自動運転の技術を蓄積し、全く違う形でその技術力を裏付けているのがアマゾンなのだ。それは無人コンビニ、「Amazon Go」でもすでに運用されている。