「動く日本列島」を体感! リニューアルした〈地質標本館〉探訪記

最新立体地図と地球のお宝を堪能する
中川 隆夫, ブルーバックス編集部

海岸線の変化を動画で再現

「もしかして動画も映し出せるんじゃないですか?」とけしかけると、藤原さんはウンウンと頷いて、次のアニメーションを見せてくれた。

「日本列島は、氷河期を迎えるたびに海岸線が後退して、現在は海のところもかつては陸地だった時代があります。瀬戸内海などは、まるまる陸地だったんですよ」

藤原さんの解説に合わせて、海岸線が変化していく。数万年分の変化を、瞬時に描き出すことができるようだ。ブルーバックスの昨年のヒット作『日本列島100万年史』で描かれたような地形変化、たとえば、伊豆諸島が南から北上して日本列島にぶつかり、伊豆半島ができるようすなどが、いずれこの立体地図の上で表現できるようになる。

「そのアニメーションを作る予算がつけばね」と、藤原さんは茶目っ気たっぷりに笑っている。

改装前にこの場所に設置されていた日本列島立体地質図は、模型に塗装が施された一種類の地質図でしかなかった。それが、立体白地図にプロジェクションマッピングを組み合わせたことで、静から動へと動きのある展示に変わった。

その可能性は大きく広がっている。横からの風景も、上空からの景色も、自由に視点を変えて見ることができる。あたかも、観覧者自身が巨大なドローンになって全国を高速飛行している気分を味わえるのだ。


写真7 改装前の日本列島立体地質図

それだけではない。

深い海溝から海岸線を抜けて山頂まで上昇していく海陸シームレス・ドローンの疑似体験も可能だ。大人から見ても、かなり面白い初体験になるだろう。

「今のところ、衛星写真と地質図、地形図の3パターンの投影をベースに、そこに鉄道網などの情報などを組み合わせることで、3×10種類ぐらいの映像パターンができます。」

「苦労したのは、精度をどこまで高めるのかということ。地形の削り出しには0.02mmの精度を求めていますから、投影の精度もそれに合わせて上げなければいけません。5台の投影機でカバーしているので、どうしても補正が必要となります。1mmズレるだけでも、その影響はバカにできないですからね」(藤原さん)

液状化した土地の断面

おっと! 次の展示へと移動しなければ、一日がここで終わってしまいそうだ。

探検隊は足早に藤原さんを追って、2階へと階段を登った。ぐるぐると丸く回転している階段は、上から見ると「アンモナイト」を模した形になっている。さすがは地質標本館、芸が細かい。

写真8 「アンモナイト」を模したらせん階段 地質標本館ならではの演出!

2階にも、重要なブツが数多く展示してある。

畳2畳分以上ものサイズを占めるのが、東日本大震災で現れた千葉県北東部の液状化した大地を縦にはぎ取ったもの。昭和30年頃まで川だったところを埋め立てて耕作地にしていた場所だという。川底をさらって浚渫(しゅんせつ)した砂の層が、地震の揺れで2m上の表土まで流れ出し、液状化したようすがハッキリとした形で残っている。

写真9 東日本大震災で液状化した千葉県北東部の大地の断面

大型展示としては他にも、活断層をはぎ取った断層面の巨大パネルがある。

もちろん災害だけにとどまらず、産総研が研究を進めている、再生可能エネルギーの展示もある。中心は地熱利用だ。2011年の東日本大震災以降、あらためて注目を集めることになった地熱発電は、温泉利用や国立公園内に多いなどの立地面の問題を含みながらも、それらとの共生を目指して進められている。

地下5~100mの浅い地熱利用も研究対象とされており、季節にかかわらず安定した地中熱を利用して、パイプの水や不凍液を循環させることで、わずかな温度差を冬なら暖房に、夏なら冷房に利用できることを、わかりやすく解説している。


写真10 活断層の断層面

地質標本館の2階には、このように生活と鉱物資源や、地質現象など2つの展示室がある。