「ドル暴落」さえも予感させる世界経済の不安

中国の株価はピーク時から2割減

 天変地異が起きる時は時代の変わり目なのか。巨大地震に続いてアイスランド火山の大爆発。何やら不気味な予兆である。

 同じ欧州の南端、ギリシャ発の財政危機は心停止状態。いくら輸血しても追いつかない。国内外で「とりつけ」に見舞われ、EU諸国の銀行危機になってしまった。先週は崖っぷちのウィークエンドだった。

 G7の枠組を使った89兆円のユーロ防衛口約束で、何とか当面の危機はひとまず封印した。しかし、いつまで持つかは、今後の情勢次第である。

 欧州金融危機が勃発するとアメリカに波及するのは必至だ。世界金融危機となる。オバマ大統領がメルケル首相やサルコジ大統領に電話するなど、各国首脳が動いた。とにかくアジアのマーケットの週明け開く前が勝負だ。国際版「金月処理」が行われた。

 金融の世界は共通(ユーロ・ECB)でも各国の財政は別。他国支援には反発が大きい。特にドイツは、ギリシャ支援に反対の声が反映され、メルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)が北ライン・ウェストファーレン州の選挙で一挙に6議席失い、参議院が過半数割れとなった。

 ユーロが下がって問題国の金利が上昇するというのは、まさに信認が失われた証拠である。1ユーロが1ドルともなると大暴落だ。

 リーマンショックの危機の震源地となったアメリカの住宅事情はどうか。リスケや返済遅延の差し押さえ予備軍まで数えた隠れ在庫まで入れると、膨大な売り圧力となる。

 住宅ローンのロス率がさらに高まれば、CDOなどでオフバラ化して飛ばしていた大穴が再び現実化するだろう。

 ドルの実効レートが上がり、輸出戦略にブレーキ。ブッシュ時代の減税措置が終了して実質増税となれば、アメリカ経済の減速リスクは高まる。減税を続ければ1兆ドル以上の財政赤字が継続することとなり、これも難しい。

 連邦議会の金融制度改革は、銀行規模の圧縮、銀証分離の復活、大手行破たん処理スキームの整備などの厳しいボルカールールに加えて、デリバティブ規制を既契約分にも遡って適用するなど暴走気味の様相を呈してきた。

 ついこの間まで政権と蜜月関係にあったゴールドマンサックスが、今やSECから刑事訴追を受けるまでになった。

 世界経済の最も強力な牽引車となった中国はどうか。上海万博は予定入場者の半分もいかないのではないか、と言われている。景気減速が始まったのか。

 中国人民銀行の法定準備率は引き上げられ、不動産融資規制でバブル崩壊も。株価はすでにピーク時から2割以上も下落している。本格調整だ。

 鉄鋼・化学・自動車・電力など生産能力を増強してきた分野は、今や過剰状態。デフレ懸念が台頭してきた。

 中国経済の減速は、一次産品市況の下落につながる。石油生産国の経済が下向けば政情不安→テロの温床となる。

 今秋の米中間選挙を控えて、米議会は中国の通貨政策に目を光らせる。米財務省は為替操作国の認定はひとまず見送ったものの、米中戦略対話では人民元切り上げ圧力が加えられるのは必至である。切り上げか、さもなくば貿易制限か。

 中国の輸出は強いわけではない。貿易黒字が減少すれば外貨準備の増加ペースも落ちる。為替ターゲット金融政策をとってきた中国にしてみれば、信用拡大のペースが落ちるということだ。これで人民元が切り上げられれば、ダメージは大きい。

元補佐官が提言する五箇条

 翻ってわが日本はどうか。G7各国首脳が重大な週末の中で危機の連鎖を止めるべく額を寄せあっているとき、鳩山総理はひとり蚊帳の外という感じ。景気の二番底を心配してし過ぎることはないのに、相変わらず総理官邸に司令塔機能が不在である。

 普天間の迷走は、辺野古沖「桟橋方式」の「腹案」では決着不能の状況。つぎの腹腹案はキャンプシュワブ陸上案か。米議会が米海兵隊のグアム移転予算をカットするぞとオバマ政権に圧力をかけている今こそ、日米合意の絶好のチャンスだ。

 問題は地元の合意。県外海外をあおった鳩山総理の責任は大きい。5月末という自ら設定した期限をジャンプするために持ち出してきたのが、「腹案」だった。まさにたちの悪いアリバイ作りだ。

 各社世論調査で鳩山内閣支持率急落に歯止めがかからない。最大の要因は鳩山総理の指導力。多くの国民は「もうこの人にはお任せできない」と考えている。

 すべてはスタートダッシュが間違いだったということだろう。政権移行チームも、国家戦略局も、幹部官僚人事の入れ替えも、すべてうまくいかなかった。最初のボタンのかけ違いがたたっている。

 鳩山総理の決断をサポートする体制が、まるでできていなかったことに尽きる。この裏方スタッフ体制が機能していれば、ルーピー総理などと言われずにすんだのではないか。

 原英史「官僚のレトリック」(新潮社)には、こうした分析に基づき、真の政治主導を実現する大義とノウハウが鮮やかに描かれている。ちなみに、原氏は私が行革担当大臣の時の「政治任用」補佐官だった。

 原氏が提言する政治主導を実現する五箇条は金言である。

(1) 官僚を使いこなす前にまず官僚を選べ
(2) 閣議を"お習字大会"から討議の場にせよ
(3) 「人事院」と「身分保障」を廃止せよ
(4) 改革の戦術論は、過去の成功と失敗に学べ
(5) 「脱官僚」に足る政治家を揃えよ

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