元経済ヤクザが解説する「暴力と仮想通貨」の驚きの関係

歴史を見ればわかる

自身の経済体験を赤裸々に綴り、地下経済の仕組みをも明かした衝撃の書『アンダー・プロトコル』著者の猫組長が「仮想通貨」のリアルを解説する本シリーズ。今回は、「仮想通貨覇権」を狙うロシアの動きから、暴力と貨幣の関係を読み解く。

G20の仮想通貨対応が意味するもの

3月22日に閉幕したG20財務相・中央銀行会議。この会議でもっとも注目されていたのが、「仮想通貨」に対する規制が宣言されるかどうかという点であった。

結局G20は仮想通貨を「法定通貨としての主要な特性に欠けている」とし、「暗号資産」としてその監視の必要性は認めたものの、規制にまでは踏み込まなかったのだ。

このG20の消極姿勢に大きな影響を与えたとされていたのが、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行の総裁であり、FSB(金融安定員会)議長のマーク・カーニー氏だ。カーニー氏は、「仮想通貨」がトピックにあがると予想されていた今回のG20参加者に向けて、3月13日付けで書簡を送っている。そこには、

<(仮想通貨の)急激な成長にもかかわらず、グローバル市場全体での規模は、世界のGDPの1%にも満たない>ことから、<現時点において仮想資産がグローバル金融の安定性を脅かすリスクはない>

と明言されていた。つまり仮想通貨への規制の必要はない、ということを事前に通達したのである。国際金融に強い影響力を持つカーニー氏がこうした書簡を送ったこと自体がニュースとなり、このことはすぐに全世界に伝わった。

 

投機対象としての「仮想通貨」にとって、「規制」はファンダメンタルバリューを大きく損なう要素。仮想通貨の売買に心血を注ぐ者たちは、この「カーニー書簡」のニュースを見て、規制は免れそうだと判断、仮想通貨は一斉に大幅な値上がりとなったのだ。

しかし、このニュースは相当歪められて伝えられていることを指摘しておこう。過去、カーニー氏は、仮想通貨への規制の必要性を説いていたばかりか、今年2月には「(仮想通貨は)通貨として失敗だ」との発言をしている。

カーニー氏が短期間で変節したのではない。この書簡で彼が訴えたかったのは、仮想通貨への規制の否定ではなく、「ブロックチェーン技術を規制してはならない」ということだったのだ。

ところが仮想通貨の売買に心血を注いでいる人々は、その本質的な部分には目をつぶり、「カーニー書簡」を、投機熱を煽る「材料」として利用した、というのが正しい見方だと私は考えている。

G20が仮想通貨の規制に踏み込めなかったのは、すでに仮想通貨には各国の思惑が複雑に入り組んでいるからだろう。その思惑こそが、前回『元経済ヤクザが見た「新・仮想通貨」を巡る大国間の熾烈な争い』で書いた「仮想通貨2.0」……すなわち各中央銀行などによる「ソブリン・クリプト・カレンシー」の発行に他ならない。

現在、世界経済はアメリカと中国の大国に二分されているが、こと「ソブリン・クリプト・カレンシー」においてはアメリカとロシアが激しく争っているのだ。どういうことかを説明しよう。

9・11後の世界では、アメリカが金融システムを監視し、支配するようになったことは前回述べた通り。この金融システムから逃れたい国…その筆頭格であるロシアにとっては、ドルに代わる新たな「金融基軸」を作り出す必要がある。そんなロシアが喉から手が出るほど欲しかったのが、仮想通貨なのである。