年金情報中国に流出で発覚…!IT公共事業の「ブラックな実態」

適正価格の6割引きで請け負っていた

適正価格の6割引きで「安請け合い」

契約では、SAY企画は約800人の人員を作業にあてることになっていた。そこで同社は時給1100円でパート・アルバイトを募集したが、十分な人数を集めることができなかった。

同社の切田精一社長が3月20日の謝罪会見で語ったのは、要するに「人も時間も足りなかった」という苦悩だ。同社が使っていた機器は古く、ネットワーク環境も含めて処理スペックが低かったとの情報もある。

今回、SAY企画がデータ入力を請け負っていた「扶養親族等申告書」の記入項目は、提出日、年金受給者の氏名とその読み方、電話番号、生年月日、個人番号(=マイナンバー)、年収、障害の有無、寡婦・寡夫の選択、さらには配偶者や扶養家族の個人情報など多岐にわたる。

 

「データ入力」とは具体的にどのようなものかというと、申告書に手書きで書かれたこのような情報を、ひとつひとつデータに起こし、誤りがないか確認する作業のことだ。

手書きOCR(光学文字認識)やスキャナー画像から自動でコードに変換した文字を、原本と突き合わせて確認・修正していく。

パートやアルバイトの素人でも入力業務に従事できるし、一見するとイチからキーボードで入力するより効率はいいようだが、手書きの書類には字形が似た異体字や誤字も多い。人名・地名の外字も、人力で処理するほかない。膨大な書類のスキャニングと校正が、作業の大半となる。

データ処理関連企業の業界団体、日本データ・エントリ協会(JDEA)が策定した「データエントリ料金資料」2017年版によれば、管理費用を10%とし、適正な業務環境を維持するには、最低でオペレータ1人あたり月56万4600円の予算が必要という。しかもこの値は「22歳・経験2年、基本給17万8000円」の新人オペレータを想定し算出されたものだ。

年金機構とSAY企画の契約では、約800人が作業に従事することになっていたので、上記の金額から単純計算すると約4億5000万円かかる。だが入札完了後に年金機構が公開した予定価格は2億4214万円、落札価格は1億8200万円なので、SAY企画は適正価格の4割で「安請け合い」をしたことになる。

これではあまりにも「ブラック」な待遇ではないか、と普通は思うが、実はSAY企画の落札単価14.9円はまだマシなほうだ。2017年4月26日に成約した年金機構の「扶養親族等申告書データ入力業務」23.5万件の単価は7.52円。同じ案件の2015年9月15日成約の192万件ではわずか4.4円だった。

低価格でも落札する業者がいたのは、入力件数が少なく手空きのオペレータを業務に充てることができたからだろう。しかしそうだとしても、開いた口がふさがらない低価格であることに違いはない。

むしろこの2年間で4.4円から7.52円、さらに14.9円と、3.4倍に増額されたとも言えるのだが、いずれにせよ、このような条件で厳正なセキュリティ・情報管理体制を整え、プロのオペレータチームを編成するデータ入力会社が積極的に応札するはずがない。

年金機構の水島藤一郎理事長は、謝罪会見で「代わりの業者が見つからなかった」と述べたが、当たり前である。