画/おおさわゆう

放射線科が「大学病院の影の実力者」と呼ばれる理由

覆面ドクターのないしょ話 第9回
病院には、医者や看護師以外にもさまざまな仕事をする人がいる。そんななかでも、医者がその意見や判断を決しておろそかにできない職種がある。外科医として「彼らにはお世話になりっぱなし」という次郎先生が、病院の「影の実力者たち」を感謝を込めて紹介する。

外科医をギャフンと言わせる放射線科医

本日は、一般の方々にはあまり知られていない病院内の職種を御紹介いたします。

冬のある日、気象予報士の方が衛星画像を解説していた。

「日本海側には大陸からすじ状の雲が流れ込み、冬に特徴的な雲の状態です」

これを見て、「似てる!」と思った。何に似ているのか? それは放射線科医に、である。

読者の皆様、実は、放射線科が大学病院内の影の実力者だということをご存知でしたか?

 

放射線科の医者は、レントゲン室の奥の暗い部屋で黙々と重要な仕事をしている。それは「読影(どくえい)」である。

画像技術が高度に進歩した今日、多くの医者は、放射線科医に画像を専門的に読んで診断してもらっている。この作業を「読影」という。

特にCT 、MRIなどで腫瘍の診断をし、位置、大きさ、深さ、浸潤範囲、手術の際の注意事項などさまざまな情報を教えてくれる。だから各科の医者はみな、放射線科には一目置いている。

画像を読む点で、気象予報士と放射線科医とは似ている。

CT、MRIといった機器が導入されたことにより、放射線科医の重要度は増している(photo by istock)

昔々、打撲で下肢の感覚麻痺が生じた患者さんがいた。この麻痺を手術で治療しようと、外科の担当医が計画した。MRIを撮影し、放射線科と早朝ミーティングを行った。

このミーティング、一風変わった光景だった。外科医は皆、襟を正して参加していた。一方の放射線医たちは、ラフなシャツを着て、朝食用のサンドイッチやおにぎりをムシャムシャ食べながら討論に参加するという、ちょっとお行儀の悪い集団だった。放射線科医は日頃から、人に気兼ねすることなく、何かを食べながら仕事をすることに躊躇がない。

「あの態度、気にいらねぇな」

外科サイドに不満がくすぶったままミーティングが始まった。

「原因検索と治療を目的に、試験的に切開する方針です」

すると、放射線科医は言下に否定した。

「やっても無駄ですよ! MRIには何にも写ってませんから」

外科の執刀医は怒りを露わにした。

「あいつら、オペのイロハも知らねぇくせに!」

手術は強制執行された。

「原因をつかんで、放射線科のヤツらをギャフンと言わせてやる!」

ところが、麻痺の原因となっている神経を露出してみたが、出血や神経の損傷など原因らしき物が見当たらない。

「き、きれいですねぇ」

「いや、そんなこたぁねぇだろ! 麻痺はあるんだぜ」

何度見ても一緒だった。外科サイドの完全な敗北だった。肩を落として放射線科に行き、手術所見を報告すると、放射線科医はこう言った。

「僕の言った通りでしょ? 内服薬で治療すれば?」

諸葛亮孔明にしてやられた気分だった。

「これからは耳を傾けなければなりませんね」