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ハイスペック女性がアラフォー非正規社員を結婚相手に選んだ理由

何を捨てて、何を選ぶか
鳥山明に憧れパチンコ店を退職、ゲーム制作会社で働くアラフォー非正規社員男性が、高学歴、高収入の理系博士女性と結婚できた理由とは? 「晩婚さん」ならではの幸せと、立ちはだかる現実に迫った新刊『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』の著者が、42歳夫×41歳妻の「新婚さん」にインタビュー。

就職氷河期世代に生まれて

ここは東京・目白の住宅地。老夫婦が経営する一軒家カフェに来ている。太陽光がふんだんに入り、多くの花に囲まれた天国のような店内。テーブルを挟んで筆者と向かい合っているのは、中村紀彦さん(仮名、42歳)と里奈さん(仮名、41歳)の夫妻だ。

ゲーム制作会社で勤務している紀彦さんは長く契約社員の立場だったが、狭き門である正社員登用試験に無事合格。この春からは正社員になることが決まっている。昨年には待望の子どもが生まれた。博士号を持つ里奈さんは産休が明ければ研究者としての仕事に復帰し、紀彦さんとのダブルエンジンで家計を支える。

順風満帆の人生に見えるが、紀彦さんの20代30代は挫折と苦労に満ちたものだった。北関東出身である紀彦さんは1998年に大学卒業後、都内の「エンターテイメント企業」に就職した。具体的にはパチンコ店のホール担当だ。

「自分が何をやりたいのか模索しながら就職活動をしました。たくさんの企業に落とされる中、とにかく内定をもらうためだけに受けた会社です。入社したものの、好きな仕事でもなくてしんどいことばかりでした」

 

筆者は紀彦さんと同じく就職氷河期世代(1972年~82年生まれ)なので、当時の紀彦さんの心境と状況がわかる気がする。大企業がほぼ横並びで新卒採用を絞り込む一方で、「好きなことを仕事にしよう」「実力主義の現場で即戦力になろう」という煽り文句が溢れていた。外資系金融やコンサルティング会社がもてはやされ、買い手市場の中でいわゆるブラック企業はやりたい放題に採用できた。

このような状況で無理に就職をしても「使い捨て」にされてしまうことが多い。紀彦さんもその一人だった。労働環境に耐えきれずに3ヶ月で退職。警備員のアルバイトをしながら模索の日々を再開する。

我々は、『週刊少年ジャンプ』の全盛期に少年時代を過ごし、ファミコンにはじまる家庭用ゲーム機の進化とともに成長してきた世代でもある。紀彦さんは漫画家の鳥山明に強く憧れていたと明かす。『ドラゴンクエストⅢ』のキャラクターが大好きで、真似して描いていたことを覚えている。

「会社を辞めた理由の6割ぐらいは、やっぱりゲーム業界で絵を描く道に進みたかったからです。キャラクターデザインのコンテストに応募して、ちょっとでも引っかかることができれば就職先を探そうと思いました」

学生時代の専攻は経済学。絵はほぼ独学である。しかし、努力の末にかろうじてコンテストに入賞。自信をつけた紀彦さんはあるゲーム会社に「第二新卒」として入社を希望する。

「最終面接まで進んだのですが、『今どきパソコンで絵が描けないようならば話にならない』と社長から言い渡されてしまいました」

ずっと手描きをしていた紀彦さんはパソコンを持ってすらいなかった。悔しさもあり、なけなしの貯金をはたいてパソコンを購入。すると、「パソコンをいじるのが面白くて仕方ない」ほどにハマった。就職情報誌の人材募集記事を探しては応募し、小さなゲーム制作会社にアルバイトとして入ることができた。