移住はどれだけ増えているのか? 海外も注目する日本の「田園回帰」

移住者に「3つの変化」が起きている
小田切 徳美 プロフィール

第3に、受け入れ自治体が金銭的メリットの供与ばかりを重視する発想は見直しが必要だろう。

地方創生により、移住家族への「奨励金」等の様々な優遇措置がとりざたされているが、移住者は各地の地域づくりの内容やそれに参画する住民の思いに対して、共感を持ち、選択して参入することも多い。

これは、先の日本地図で見た移住者数に地域差があることと無関係ではない。移住者が遠隔地や小規模市町村に向かうのは、そこでの金銭的メリット措置が大きいからではなかろう。

むしろ、魅力的な地域をつくり、その姿を移住希望者に届けることができたか否かに起因している可能性がある。つまり、魅力的な地域に移住者が集まり、さらにその人々が地域に今までとは異なる視点から光をあて、一層のみがきをかけているのである。

要するに、「地域づくりが移住を促進し、移住者が地域づくりを支える」という「地域づくりと田園回帰の好循環」が生まれており、それを各地で促進することが期待される。

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「にぎやかな過疎」を創る

このように、新たな傾向としての農山村移住は、新たな課題を伴いながらも、地域の新たな可能性を拓きつつある。

ところが、東京圏には毎年12万人の流入超過が続いている。そこに政府の苛立ちもあり、移住の動きが力になっていないという認識も根強い。

しかし、その議論は、移住者がもたらす質的側面を見逃している。既に見たように移住者は地域に対して、なんらかの共感を持ち、選択して参入している。

また、Uターン組でも、あえて地元に戻る決意をした者が大多数であろう。これらの場合には移住者は単なる頭数を超えた力となる。

彼らが持つ発信力はSNSなどの手段により極めて高く、その発信がさらに新たな移住者を呼び込む現象も一部では生まれている。

そのような状況を筆者は「にぎやか過疎」と呼んでいる。

 

最近訪ねた自治体で言えば、愛知県東栄町、山口県阿武町、同県周防大島町などで、その雰囲気に触れることができた。

これらの地域は、移住者がネットワークを作り、それ自体がいきいきと動いている。

移住者相互の「人が人を呼ぶ」という関係はさらに活発化して、ある起業が別の仕事を生み出す関係も見られる。

また、地域の元々の住民と移住者が気軽に会話できる場を、バーやカフェなどの形で作っている点も共通している。それは「地域の縁側」と言え、「にぎやか」という印象はここから発信されていることが多い。

この結果生まれたのが、「にぎやかな過疎」であり、別の表現をすれば、「人口減・人材増」である。

人口の自然動態がマイナスであるために、地域全体の人口は引き続き減少しているが、地元の人々を含めて、多様な人材が多様なルートで形成されている。

こうした状況こそが農山村の将来目標にこそふさわしい。その意味からも、ここで見た田園回帰を過小評価してはならないのである。