移住はどれだけ増えているのか? 海外も注目する日本の「田園回帰」

移住者に「3つの変化」が起きている
小田切 徳美 プロフィール

移住者の「3つの変化」

このような、農山村移住には、量ばかりでなく、質的な変化も見られる。

第1に、世代別に見れば、20~30歳代の移住者が目立っている。10年ほど前には、「団塊の世代」の退職にともなう高齢者の地方移住が期待されていたが、最近では違う動向が生まれている。

第2に、性別では、女性比率が確実に上昇している。単身女性の移住に加え、ファミリー層が動き出すことにより生じている。それは、女性による子育て環境の選択が影響していると思われる。

先にも触れた「地方消滅論」は、若年女性(20~39歳)の大幅な減少という推計結果から、「地方消滅」を予測した。しかし、実はこの部分にこそ大きな変化が見られるである。

 

そして、第3に、移住者というと、Iターンを思い浮べがちであるが、Uターンの増加も目立つ。現地調査によれば、Iターンが増加した地域でUターンが増えるという傾向が見られ、前者が後者を刺激する関係にある。

Iターンの振興には、地域内から「よそ者偏重」という批判がしばしば見られるが、現実には、彼らだけに留まらない効果を生み出している。

以上の質的変化は大きく言えば、移住者の「多様化」である。つまり、中高年から若者へ、男性主体から女性の増大へ、そしてIターンからUターンを含めた移住への変化である。

〔PHOTO〕iStock

農山村移住の課題

このような農山村への移住には、高いハードルがあると言われていた。

①むらの人間関係が濃密すぎる、②過疎化にもかかわらず空き家が流動化しない、③仕事がない――「むら、空き家、仕事」の3大ハードルである。

最近の移住者の増大は、これらが改善されつつある結果でもある。

とりわけ心配されている「仕事がないから移住など無理だ」という状況には、「仕事を持ち込む」(リモートオフィス、サテライトオフィス)、「新たに仕事を起こす」(起業)、「古くからの仕事を継ぐ」(継業-後継者がいない地元の仕事を受け継ぐ)に加えて、「いろいろな仕事を合わせる」という行動が見られる。

特に、最後のものは、都市と農村に共通する若者の新しいライフスタイルであり、地域づくりNPO職員+民泊経営+農林業という組み合わせなどが見られる。

ところが、新しい問題や政策課題も発生している。

第1は、「移住の多様性」により、移住希望者と受け入れ地域の間にミスマッチが発生する可能性が高まっている。両者のマッチングは従来以上に手間をかけなくてはならない。

この点を意識した動きとして、和歌山県那智勝浦町の色川地域振興推進委員会のケースがある。

ここでは、地域づくり組織であるこの委員会が直接、相談窓口となり、移住希望者に4泊5日で、地域内15人の家を訪ねる「定住訪問」の機会を提供している。このリストは、移住者の動機により、委員会がその都度オーダーメードで作成している。

そこには、地域のリアルな実情を人レベルで知って欲しい、そして本当にあこがれた人がいたら来て欲しいという思いが込められている。その結果、色川地区では移住者が人口の45%にも達している。

第2に、移住者の将来を見据えた対応も求められる。たとえば、若い夫婦が定住し、それが長期化すれば、子供を含めた家族としての暮らしになる。子供の大学進学が視野に入る頃には、その費用の負担が課題とならざるを得ない。

例えば、夫婦で300万円を目標所得とする移住者にはこの負担は絶望的な壁となる。

このことは、問題の一例である。指摘したいことは、従来の政策が、移住の瞬間だけに集中しており、その長期化という関心が著しく薄いことである。移住家族のライフステージに応じたサポートが必要であろう。