虐待や障害で親が手放した子供に差し伸べられる「救いの手」

育てられない母親たち【17】
石井 光太 プロフィール

風俗の仕事を続けたくて子供を養子に

ベアホープは、電話やメールで妊婦向けの相談窓口を設置している。相談件数は、年間三百件ほど。内容は「妊娠したかもしれない」とか「中絶を考えている」など様々だ。ケースワーカーなどが対応し、解決に向けて取り組んでいくことになる。

ただ、このうちの一部は、中絶可能な時期をすぎるなどして、出産をせざるを得ない状況にある。そんな母親たちが出産した赤ん坊を特別養子に出す選択をすることがある。年間25件ほどだそうだ。

 

一方で、ベアホープは、インターネットのホームページなどを通じて特別養子縁組の養親を募集している。応募者の多くが不妊症などで子供ができず、できるだけ小さな赤ん坊を養子にしたいと考えている夫婦だ。

ベアホープは応募者を研修、育成し、面接家庭訪問を経た「待機家庭」になってもらう。そして、実親から特別養子に出したいという希望を受けた時点で、待機家庭の中から養親を選んで、引き渡すのだ。

(その他、児童相談所や病院から、特別養子縁組をさせたいという相談が来て、マッチングすることもある)

別の団体の職員は言う。

「実親が子供を育てるに越したことはないと思っています。でも、それを望まない、できない親というのはいますので、そういう方々に特別養子縁組の支援をするのが私たちの役割だと思っています。親が子供を特別養子に出す理由は様々です。目立つのが、若くて家庭を築けるだけの経済力がないとか、風俗で働いていて今後もそうしていくつもりなので出産して生活が大きく変わることが不安だとかいったことです」

民間事業者を通して二度にわたって赤ん坊を特別養子に出した女性がいる。風俗店で働く20代の半ばの女性だ。

彼女は知的障害で精神疾患も患っていた。母親が風俗で働いていて、彼氏が風俗店を経営していた。ハローワークで職探しをしたが、障害者であることからなかなか希望に合う仕事が見つからず、自分も風俗で働くことにした。

風俗の仕事は、彼女には合っていたそうだ。お金も儲かるし、人からもちやほやされる。彼女は風俗が天職だと考え、一生風俗で働くつもりなのだそうだ。

ただ、そうすれば赤ん坊を育てることはできない。そのため、彼女は二度にわたって産んだ赤ん坊を民間事業者を通して特別養子として出したのだ。

「彼女自身の価値観の中で、風俗の仕事をつづけたいと考えている。人生の理想がそこにあるんです。そうなると、私たちはそれに対してダメということはできない。ならば、せめて育てられない赤ちゃんだけでも特別養子縁組をさせて、きちんとした家庭に預けたいと思っているのです」

これまで本連載で見てきた女性の中にも、少なからず右記の例に似た女性もいた。

彼女たちに一般的な常識を押し付けて説教をしたところで、なかなか真っ当な道にもどすのは困難だ。ならば、せめて赤ん坊だけでも特別養子縁組に出して、幸せな家庭を整えてあげることは一つの選択肢として正しいだろう。