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渡り鳥は迷わない!?――驚くべきナビゲーション能力に迫る!

鳥類の驚異的知能!

ファンタジーのような鳥の能力

近年、海外ドラマに多くの傑作が生まれている。私のお気に入りは『ゲーム・オブ・スローンズ』だ。私たちの世界によく似た架空の世界(人間がいて、さまざまな動物や景色がある)を舞台に、その支配者の椅子「鉄の玉座」をめぐる血みどろの戦いが描かれる。

ファンタジーとアクションがてんこ盛りで、エロとグロがまぶされ、人間のあらゆる側面が表現され(完全に“良い”人も“悪い”人も出てこないのが本作の魅力)、ストーリーはまったく先が読めない(ファンのあいだでは毎シーズン、誰が死に、誰が生き残るのかの予想がくり広げられる)。中学生男子がもっとも見たい(でもR指定されてるから見ちゃダメ)ドラマであり、大人にとってももちろん面白い。

 

このドラマに登場する通信手段といえば使い鴉だ(電気は利用されておらず、通信機器は存在しない)。カラスの足に手紙をくくりつけ、飛ばす。よく訓練されたカラスは遠く離れた城へ手紙を届ける。

ドラゴンや不死の軍団が登場するファンタジードラマではあるが、鳥を使った通信はファンタジーではない。現実の世界でも伝書バトは頻繁に使われていたし、いまも一部の地域では有力な通信手段になっているそうだ。

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ナビゲーション能力

目的地にたどり着ける伝書バトはすごいが、渡り鳥もすごい。遠く離れた繁殖地と越冬地を、地図もコンパスも使わずに行き来する。中学生時代に学校から家までのおよそ2キロの帰り道で迷子になった私は、渡り鳥のクチバシを煎じて飲みたいくらいだ。

渡り鳥の能力は、ただ遠く離れた地点を行き来できるだけではない。ある科学者が渡りの途中の鳥たちを誘拐し、目隠しした状態で渡りのコースから数千キロ離れた場所へ連れて行き、放鳥するという実験をおこなった。

鳥たちは一度も行ったことのない場所で解放されたわけで、中学生時代の私ならば助けてもらえるまで泣きつづけたにちがいない。一方、そんな理不尽な目にあった渡り鳥たちは、数時間で目的地へのコースを見定め飛び去ったという。

渡り鳥だけでなく一部の動物たちは長距離を旅する。クジラの大回遊やサケの産卵のための母川回帰を思い浮かべてほしい。これら動物たちが移動において適切な経路を選択する能力を「ナビゲーション」という。

動物のナビゲーション能力は多くの科学者の関心を集めており、日本でも大きな研究計画が進められている(新学術領域研究「生物移動情報学――生物ナビゲーションのシステム科学」)。

それにしても、地図もコンパスももたずに何千キロも離れた目的地へ移動できるのはどういうわけだろうか? 渡り鳥のナビゲーション能力はどのような情報にもとづいているのだろうか?

移動する動物たちのナビゲーション能力 photo by iStock(3点とも)

地磁気センサー?

むかしからよく言われているのは、地磁気を感じ取っている、という説だ。

昨年、新しい地質年代の名称として「チバニアン」が採用されるというニュースが報じられた。その解説記事をお読みになった方はご存じだろうが、地球には惑星全体を覆う磁場(地磁気)が存在する。

地球深部の外核は流動する金属(おもに鉄)で、電流と磁場を生じさせている。コンパスのN極が北をさすのはこの磁場のためだ。また、地磁気の水平面に対する角度は緯度によって異なる。つまり、精密な地磁気センサーをもっていれば、方位と自分がいまいる場所の緯度を割り出せる。

動物たちのナビゲーション能力はなんらかの地磁気センサーにもとづいているに違いない。じっさい、渡りの時期にある渡り鳥をコイルで覆ったかごに入れる(地磁気より強い磁場に覆われてしまう)という実験をおこなったところ、混乱していろいろな方角へ飛び立とうとしたらしい。渡り鳥だけでなくハチやクジラなど多くの動物たちが地磁気を利用していると考えられている。

しかし、どうやって?