「なぜうちの商品は売れないのか」と悩む前に磨くべき、ひとつのこと

哲学をビジネスに効かせる方法
小川 仁志 プロフィール

絶対知から「多幸知」へ

もう一つのヘーゲルの概念は「絶対知」です。これはヘーゲルが掲げた意識の最高到達点といっていいでしょう。ヘーゲルは『精神現象学』の中で、意識が成長していく様を描きました。人間の意識は経験を通して成長していくものなのです。その極致として描かれたのが絶対知でした。

それは神のごとくすべてを見渡すことができる知です。しかし、私の提案する多項知は、そのような唯一の知を志向するものではありません。

むしろ様々な種類の知があっていいと思っています。たとえその一つひとつは完璧なものでも、絶対的なものでもないとしても、その都度役立つものであればいいと思うのです。

そうでないと、なかなか手に入れるのは大変なのではないでしょうか。ヘーゲルの時代の牧歌的な社会とは異なり、現代社会は人間には計算できないほど複雑化しています。したがって、何をもって絶対知とするかも不明なのです(原発の事故と人間の際限ない戦いの様子を見れば、それは明らかでしょう)。

私たちはもう、いくら備えても絶対安全とはいえない状況に突入してしまっているのです。とするならば、求めるべきは絶対知ではなく、多項知であるべきなのです。あえていうならば、この発想は私たちの幸福感にもつながってきます。

 

多項知は、そうした複雑な時代に多様な幸福をもたらしうる知恵、いわば「多幸知」なわけです。絶対知は絶対的な幸福、一つの幸福を強要するものだったといっても過言ではありません。

ヘーゲルは近代哲学の頂点に君臨した人物ですから、近代社会の象徴ともいえます。その近代が理想とした社会のモデルが奇しくも今崩れ去り、ようやく私たちは新しい時代へと突入したのです。それこそが、多様な幸福を実現する時代にほかならないのです。

そして、多項知こそがその新しい時代を担う可能性を秘めています。そのベースにあるのがほかでもない哲学なのです。

多項知は、あくまで一人ひとりの個人が理性をアップグレードするための仕組みであることに注意が必要です。つまり、個人の理性がベースなのです。

だから、私たちは哲学をする必要があるのです。しかも新しい仕方で。タコツボの中に閉じられた哲学ではなく、社会の様々な知とつながり合う哲学、多項知の哲学。それこそが、私たち一人ひとりの人生と社会の問題を突破する鍵を握るのです。

ぜひ哲学してください。そして共にこの苦境を乗り越えましょう!

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