森友文書問題と自衛隊「日報隠ぺい事件」の、驚くべきほどの共通点

これはやっぱり、民主主義の危機では
布施 祐仁 プロフィール

日報問題でも「尻尾きり」は行われた

こうした「トカゲの尻尾きり」とも言える方針は、防衛省の日報隠蔽でも同じだった。政府は当初、「第二の隠蔽」については不問に付し、「第一の隠蔽」を行った陸自だけに全責任を負わせようとしていた。

しかし、これに反発した陸自の中から次々と情報が流出し、闇に葬られようとしていた「第二の隠蔽」が明るみに出される。

結局、陸自だけに責任を押し付けて幕引きを図る計画は失敗し、稲田大臣と黒江事務次官と陸自トップの岡部俊哉陸上幕僚長が揃って辞任するという結末になった。しかし、官邸はギリギリまで、岡部陸幕長だけを切って黒江次官は続投させようとしていたのである。

 

もし、陸自だけを「トカゲの尻尾切り」にしていたら、陸自には「背広組」と政府に対する強い不信感が残っていたことだろう。しかし、官邸はそんなことはお構いなしに、政権への打撃を最小化することだけを考えていた。

最終的に辞任に追い込まれた黒江次官だったが、辞任の2ヵ月後には、官邸直轄の国家安全保障局の参与に登用された。常識では考えられない人事だが、ある防衛官僚は「稲田大臣や政権を守るために貢献した論功行賞だろう」と皮肉まじりに話していた。

財務省の文書改ざんや防衛省の日報隠蔽が政権を守るための行動だったとしても、結果的にその不正は発覚し、むしろ政権に打撃を与えている。この発覚した時のリスクは、あらかじめ想定できたはずである。

それでも佐川氏や黒江氏を改ざんや隠蔽に向かわせたのが巷で言われている首相への「忖度」だとしたら、あまりにも行き過ぎている。

現実に、官僚が政権の意向に沿う形で行動する傾向は強まっているという。前出の防衛官僚もこう指摘する。

「『官邸主導』の名の下、省庁の幹部人事も内閣人事局に握られ、官僚は官邸に服従しなければならなくなっている」

安倍政権は、人事権を武器にして官僚を服従させ、トップダウンで官邸主導の行政を進めてきた。さらには、「安倍1強」と呼ばれる政治状況の中で「傲り」が生じ、官僚に対して強権的になっていたのではないか。

その結果、「全体の奉仕者」(憲法15条)であることを忘れて官邸の顔色をうかがってばかりの官僚が増え、官邸にとって「不都合な情報」は平然と隠蔽したり改ざんしたりねつ造するようになっているとしたら、政府への信用は地に落ちる。

冒頭でも述べたが、これは民主主義の危機である。防衛省で日報隠蔽の事実が確定して稲田大臣らが辞任した時、安倍首相は、「国民から大きな不信を招く結果となったことを、おわびしたい」と陳謝した。

そして、今回の財務省の文書改ざんについても、「行政全体の信頼を揺るがしかねない事態であり、国民の皆さまに深くおわびしたい」と謝った。しかし、謝るだけなら誰でもできる。

「戦闘」と書かれた日報が隠蔽されずに最初から開示されていれば、駆け付け警護などの新任務は付与されていなかったかもしれない。安倍首相や昭恵夫人の名前も出てくる財務省の改ざん前の決裁文書が最初から国会に提出されていれば、昨年10月の総選挙の結果は違うものになっていたかもしれない。

安倍首相自身、これまで何度も口にしてきたように、政治は結果責任である。政府への信用を失墜させるような事案を一度ならず、二度三度と繰り返している時点で、安倍首相の下では再発防止は困難だと言わざるを得ない。

真相究明のためにも

最後に、防衛省の日報隠蔽問題を追及してきた経験から、今回の財務省の文書改ざん問題で今後起こり得るかもしれないことを、警鐘の意味も込めて指摘しておきたい。

防衛省の日報隠蔽問題では、省内の調査に4ヵ月以上かかった。そして、調査が始まって以降、国会での審議が全くできない状態になった。野党が質問しても、政府側が「調査中なので答弁を差し控えさせていただく」と言って一切答弁を拒んだのである。結局、調査結果が公表されたのは、国会が閉会した後であった。

調査結果について国会で検証するために閉会中審査が開かれたが、野党が調査の詳細を質問しても、政府側は、個々の証言の内容などを明らかにすると「今後同じような調査をする場合にしっかりとした証言を得ることが難しくなる可能性も出てくる」などと言って答弁を拒み、防衛省が公表した調査結果が全てであるとの姿勢に終始した。

野党は、なぜ防衛省の省内の調査の方が国会の審議より優先されるのか、国政調査権の侵害ではないかと抗議したが、最後まで政府側の姿勢は変わらなかった。結局、国会は、防衛省の調査ではうやむやになった稲田大臣の関与の有無などの真相究明を行うことはできなかった。

省庁の内部調査や検察の捜査を理由に、国権の最高機関である国会の国政調査権が侵害されるようなことは、本来あってはならない。今回の財務省の改ざん問題では、このようなことがないようにしてもらいたい。