森友文書問題と自衛隊「日報隠ぺい事件」の、驚くべきほどの共通点

これはやっぱり、民主主義の危機では
布施 祐仁 プロフィール

もう一つの「隠蔽」

実は、防衛省が日報を廃棄していたことが大きなニュースとなり、自民党の河野太郎衆院議員(現外務大臣)もこれを問題視して防衛省に説明を求めるなどの動きがあった後、陸自は情報公開への対応が不適切であったことを認めて日報を公表しようとした。

しかし、結果的に陸自の日報は公表されなかった。国会で野党から「隠蔽だ」と追及されることを恐れた「背広組(防衛官僚)」の幹部が公表を止めさせたのである。代わりに、「日報を扱う陸上自衛隊では規則に従って廃棄されていたが、他の部署も探索した結果、統合幕僚幹部で保管されているものが見つかった」という説明で公表することにした。こうすれば、陸自による日報隠蔽を否定することができる。

日報の公表後、野党は「これは隠蔽ではないか」「陸自にも日報は保管されているのではないか」と追及を強めるが、稲田大臣は上記の説明ラインで隠蔽を否定し続ける。それに対して野党は、陸自のネットワーク上に保存されていた日報データが削除されたログ(履歴)を提出するように要求した。

これで防衛省は困ってしまう。実際にデータを削除したのは、私の情報公開請求に対して不開示決定を通知した後だったからだ。そのログを出してしまえば、隠蔽がバレてしまう。防衛省では、稲田大臣出席のもと、陸自と「背広組」の幹部たちが集まって対応が話し合われた。

後に、協議の内容を記録した手書きのメモをフジテレビが独自入手してスクープしたが、それには、陸自にも日報が保管されていたことを知った稲田大臣が動揺し、「明日(国会で)何て答えよう」と発言したことが記録されている。

 

フジテレビは、この2日後に開かれた別の会合の記録も入手したが、そこには、稲田大臣の「いつまでこの件を黙っておくのか」という発言が記録されていた。さらに、黒江哲郎事務次官(当時)は「『なかった』と言っていたものがあると(国会で)説明するのは難しい」と発言していた。

結局、陸自に日報データが保管されていた事実は公表しない方針が決められ、稲田大臣はこの後も、陸自では日報は規則通りに適切に廃棄されていたという虚偽答弁を続けた。

そして、ログの提出を求めた野党の要求に対しては、「陸自のネットワークはログが残らないシステムになっており、削除の日にちは特定できない」とウソの回答を行った。

こうして「隠蔽はしていない」という国会での虚偽答弁に合わせる形で、ウソの上塗りが重ねられていったのである。

晴れない疑念

問題は、そもそもなぜ、虚偽答弁をしたのかということである。それは、陸自が日報を隠蔽していた事実が発覚すると国会が紛糾し、稲田大臣の責任問題にまで発展しかねないと判断したからであったと思われる。

安倍首相が「将来の首相候補」と評価し防衛大臣に抜擢した稲田大臣が辞任に追い込まれたら、首相や政権にとっても大きな打撃になる。稲田大臣を守り、政権を守るための虚偽答弁であった。

防衛省が行った「特別防衛監察」の結果、「第二の隠蔽」を行う判断は最終的に黒江哲郎事務次官が行ったと結論付けられた。しかし、ここに官邸の関与は一切なかったのだろうか、という疑念は今も晴れない。後述する黒江氏をめぐる官邸の人事を考えると、その疑念は一層強くなる。

財務省の場合、佐川氏はなぜ、虚偽答弁を行ったのだろうか。それは、森友学園との国有地の取り引きに不適切な点があったと自覚していたからではないか。ここでも、これが佐川氏(財務省)だけの判断だったのか、それとも官邸の関与があったのかという点が大きな焦点となっている。

また、安倍首相が国会で「私や妻が(森友学園との取り引きに)関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁したことも、佐川氏の虚偽答弁につながったという指摘もある。そうであるならば、佐川氏の虚偽答弁も、安倍首相を守るために行われたことになる。

はたして官邸の関与はあったのかなかったのか。あったということであれば、安倍首相の責任は免れないし、官僚が勝手に暴走したということであれば、安倍首相の官僚に対するガバナンス能力が問われる。

そもそも、安倍首相が最初から徹底調査を指示していれば、財務省が決裁文書を改ざんしたり、防衛省が「第二の隠蔽」を行う余地は生まれなかったはずである。その意味でも、安倍首相の責任は重い。

私は、財務省が決裁文書の改ざんを行っていた事実が確定した段階で、麻生大臣は監督責任をとって辞任すると思っていた。しかし麻生大臣は「原因究明と再発防止が私に与えられた責任」と言って辞めなかった。そして、改ざんは佐川氏の指示で理財局の一部の職員が行ったとして、責任を佐川氏及び改ざんを行った理財局の職員だけに負わせようとしているように見える。