習近平の晴れ舞台に冷や水をかけた全人代「白眼視」事件をご存じか

「やらせ取材」批判がネットで大爆発
古畑 康雄 プロフィール

「偽外国メディア」の素性が暴露される

「国有資産の監督管理責任の調整は広く関心のある問題です。そのため、国務院国有資産監督管理委員会の主任として、あなたは2018年にどのような新たな措置を取りますか? 今年は改革開放から40年、我が国はさらに対外開放を拡大します。中国共産党の習近平総書記が提起した『一帯一路』構想に伴って、国有企業は『一帯一路』に沿った国への投資を拡大していますが、国有企業の海外資産をどのように有効に管理し、資産流出を防止するのでしょうか? 現在、我々はどのような仕組みを導入したのでしょうか?我々の管理監督の結果はどのようなものでしょうか?簡単に紹介ください」

ところがこの質問があまりにも長ったらしく、しかも媚びるような口調だったことから、隣の青い服を着た別の女性記者が「いい加減にしたら!」と言わんばかりに白い目をむけ、そっぽをむいて、露骨に嫌悪感をあらわした。

 

この一部始終が、中国中央テレビ(CCTV)の中で中継されたことから、微信や微博などネット世論は騒然となり、この2人は一体誰かと「人肉捜索」(人海戦術による身元の割り出し)が始まった。

その結果分かったのは、赤い服は「全美電視台執行台長」(全米テレビ局執行局長)を名乗る張慧君という"外媒"(外国メディア)の女性記者。「元CCTV記者」「CCTV旅游経済電視台執行台長」などの経歴もあり、ソーシャルメディアには「著名司会者」「両会気質姐」(いわば「ミス全人代」)、「ヨガインストラクター」「ミスチャイナ」などの肩書があった。

この「全美電視台(AMTV)」という「多くの米国人が聞いたこともないテレビ局」(ラジオ・フリー・アジア)は2004年、米ロサンゼルスに設立され、公式サイトによると「中国政府と中国の企業ブランドを海外に宣伝する最も優秀なマルチメディアプラットフォーム」をうたうものの、CCTVとつながりがあり、その総裁は中国政府の対外文化広報機関、孔子学院のロサンゼルス校の校長を務めていることなどが分かった。

ネットでは本社とされる建物の写真も掲載されたが、道路脇の小店舗のような、人気のないみすぼらしい建物で、「閉店したコンビニのようだ」「街中の夫婦2人でやっている餃子屋のようだ」とからかわれた。ところが、同電視台は今回、在ロサンゼルス中国領事館の協力で、5人のスタッフが全人代の取材許可を得たという。

張記者は「米国のメディア」を名乗るにもかかわらず中国を「我が国」というなど、その資質を疑わせるものだった。

筆者の知人のCCTVの職員は、「張記者はCCTVではインターンをしただけで、その後中国外交誌「世界知識」の記者だと名乗ったりしたが、実際には同誌に所属したことはない」と微信で明かした。

微信では以前地方でモデルとして活動していた時代の水着姿の写真なども暴露された。

つまりは、この「全美電視台」なる組織は、「外媒」の衣をまとった、中国政府の宣伝機関であることが暴露されたのだ。

中国寄りのネットメディア、多維ニュースさえも「中国政府はしばしば海外のメディアに出資や買収をしており、全美電視台は海外メディアのふりをした『官媒(政府メディア)』」だとしている。

中国政府が海外でメディアを作り上げる理由について、海外に中国の主張を宣伝するほか、海外からも全人代などのイベントに取材に訪れるなど、中国が国際的にも注目されていることを中国の人民に見せつけるのが狙いとされている。

筆者自身は全人代の取材経験はないが、BBCが報じた事情通の記者によれば、全人代の記者会見での記者会見は事前にアレンジされたものであり、「質問をする記者は何を質問するか、どのような色の服を着ていくか、どの場所に座るかなども事前に当局と話がついている。司会者は当日、その記者を指名し、あらかじめ決まっている問題について質問を受け付けるのだ」という。

もちろんすべての質問がやらせではなく、外国メディアは政府が嫌がる問題について質問することもあるが、今回の張記者の質問はあらかじめ打ち合わせていた可能性が高い。

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