フィギュアスケート世界選手権「女子シングルの抱える闇」

身体能力がすべて、でいいのか
青嶋 ひろの プロフィール

ジャンプだけがフィギュアスケートではない

出場選手中最年長、31歳のカロリーナ・コストナーの5位入賞もすばらしい。しかも、ただの最年長ではない。彼女の次の年長者は24歳の長洲未来で、なんと25歳以上の選手はコストナーひとりだったのだ。五輪は19歳で初出場の06年トリノ五輪から、10年バンクーバー、14年ソチ、そして今回と、4大会連続出場。

イタリアのカロリーナ・コストナー選手

好不調の波が激しかったため、常に表彰台争い、とはいかなかった。しかし初めての世界選手権表彰台が05年の3位、最後が14年の3位。10年以上世界のトップで戦い続け、31歳で五輪の最終グループを滑ったのだ。彼女とともに世界選手権の表彰台に立った選手は、05年のサーシャ・コーエンやイリーナ・スルツカヤはもちろん、14年の浅田真央、ユリア・リプニツカヤまで、もう全員が引退してしまった。

そしてこの数年は、もうコストナーが出てくるだけで会場の雰囲気が変わってしまう、そんな選手になっていた。ジャンプは若い選手の難度に、どうしても敵わない。しかし絹のような極上のスケーティングや音楽をいつくしむ身体表現など、誰よりも美しいものを見せてくれるのはこの人だ、と観客は知っているのだ。

 

勝負に勝てなくとも、ああ、これがフィギュアスケート、と思い出させてくれるもの、一番美しいものを見せる役割を担って、カロリーナ・コストナーは氷の上にいた。

男子ほどではないが、女子も高難度ジャンプをいかに多く後半に跳ぶかで勝負が決まるスポーツに、少しずつなってしまっている。そんな時代、得点は稼げなくとも、よりフィギュアスケートの大切な部分を見せてくれる選手が彼女だ、と。

私たちのカロリーナ――イタリア人だけでなく、世界中のスケートファンがそう感じている、スケート界の宝。そんな彼女が五輪の最終グループ、自分より一回り以上若い選手が4人もいる中、限りなく大きく優雅なムーブメントや滑りを見せてくれたのは、しみじみとうれしいことだった。

また個人戦では振るわなかったが、アメリカの長洲未来も、16歳で出場したバンクーバー五輪から8年ぶりに登場。

アメリカの長洲未来選手

団体戦ではトリプルアクセル成功というミラクルを見せてくれた。フィギュアスケートのなかでも、最も選手寿命の儚い世界。ここで健闘した「大人な」彼女たちには、メダリストたちとは別の、特別な賛辞が世界中から贈られた。