ストーカー対策の第一人者に学ぶ、ネット社会の「自己防衛法」

相手が「普通の人」でも要注意
佐藤 優 プロフィール

内面までは取り締まれない

ところで、ストーカーは人間の観念が脳の神経系統に影響を与えることによって起きる。従って、ヴァーチャル空間でも、ストーカーが生まれることがある。この関連で怖いのがSNSだ。

〈 SNSで見知らぬ相手とやりとりしていると、匿名性の気安さから本心を語ることができ、いつの間にか相手を「自分のことを理解してくれる人だ」と思いこむ人間も出てきます。ですので、見知らぬ相手から自分の望まない一対一の関係を求められたら、即、断るという知恵が必要です。無視すると、「断られていない」と認識されることもあるからです。

たとえば、「私は几帳面ではないので無理です」とか「期待しないでね」と、すぐに水をかける対応をとるべきです。(中略)

ただ、たとえ相手が断っても、自分自身のフェイスブックなどのSNSに書きこみをしているだけで脳が勝手に、「相手が見に来て、読んでくれているかもしれない」と思いこんだり、相手のスカイプに一方的にメッセージを送り、「相手がログインして見てくれるかもしれない」と想像したりして、興奮し始めるのもストーカーの病態なので、そこは難しいところです。

SNSの場合、リアルな人間関係がほとんどないので、ストーカーになった動機を検討したり、周囲が問題に気づいて介入したりするというのも難しく、人間関係が希薄なだけに情がなく残酷なことができやすいので、とにかく初期に芽を摘むことです。

この手のストーカーにはカウンセリング効果はさほど期待できません。長々と続くようならば、相手をブロックするのは悪くないのですが、自分だけ拒否されたという怒りにつながりやすいので、むしろいったんSNS自体を閉じてしまうことをお勧めします。

情報発信者に受信者が一方的に接近欲求を抱くことは昔からありました。しかし、以前はスターなどごく一部の人間しか、大勢の人に対して発信はできませんでした。

いまやネット社会になり、多くの人間が発信できるようになったため、こうした一方的な「相手にされない求愛型」のストーカーによる被害者が急増しているのです 〉

 

筆者が、講談社のメルマガ「佐藤優直伝『インテリジェンスの教室』」の質疑応答コーナー以外で双方向性のあるネットメディアを用いないのは、過去の経験に基づくストーカー対策の要素もあるからだ。

小早川氏は、

〈 たとえストーカーを取り締まっても、内面までは取り締まれません。ストーカーが被害者にとって有害な思考と感情を持ったままでは問題は解消したとは言えません。警告や禁止命令を出されたり、逮捕されたりした加害者には、必ず、心を方向転換させることが必要です。

そのためには、常識が受け入れられることを意図した会話(認知療法)ができ、内面にもともとある問題性にも着眼し(心理療法)、衝動性を制御する指導(行動療法)にも前向きに取り組む相談員との出会いが必要です 〉

と指摘している。

その通りと思う。取り締まりだけではストーカー対策にならない。

『週刊現代』2018年3月24日号より