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ネイサン・チェンは平昌五輪男子フィギュアスケート「影のMVP」だ

4回転以外にも注目してほしい
青嶋 ひろの プロフィール

スポーツの究極を目指したい

しかしチェンは、まだ18歳。「彼がチャンピオンにならなくてほっとした……」と思いつつも、それでもチェンの挑戦、スポーツの究極をめざしたいという思いは、ほんとうに眩しい。

「僕はまだ、若い! 失敗するための時間は、たくさんあります。多種類の4回転を何度もやる能力だってある。大きなジャンプに挑戦するために、今はちょうどいい時期なんですよ。僕がもっと大人になったとき、自分の身体はどうなっているのか? 今と同じなのか? そう考えると、挑戦を後回しにすることは、賢い選択ではない。だから今は他の要素やスケーティングのために4回転を減らすことは、全く考えていないんです」(2016―2017シーズンのインタビューより)

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平昌五輪での「4回転ジャンプ6本」という挑戦。自分の信じたもの、大好きなものに向かってひたすら進んだ価値ある挑戦であり、大きな達成だった。

彼の言うように、年齢的にも今だけの挑戦だっただろうし、五輪シーズン後のルール改正を考えると、もしかしたら時代的にも、4回転6本は史上最後の挑戦だったかもしれない。

だから期待したいのは、これからのネイサン・チェンだ。「跳びたい盛り」のやんちゃで男の子らしい意識は、きっと少しずつ変わっていくだろう。年齢を重ねた上での精神的な成熟は、芸術性への興味も高めてくれるかもしれない。

 

ジャンプのテクニックも、パフォーマーとしての資質もすべて持っている彼が、ここから先、何を選ぶのか。スポーツか、アートか、どちらかの究極をめざしていくのか。それとも……。

彼の選ぶ道は、彼の打ち込んでいるスポーツがフィギュアスケートだからこそ、無限に広がっている。ここから先、きっとネイサン・チェンは、どんな選手にでもなれる。

フィギュアスケートを危機に陥れかけた男。実はこれから先、フィギュアスケートの面白さを最も体現してくれる男になるかもしれない。

名古屋の泣き虫スケーターは、いかにして世界を震撼させる4回転ジャンパーとなったのか? 小学生時代からの本人インタビューを中心に、コーチ、選手仲間、関係者など、20数名の証言を元に解き明かす、奇跡のスケーターの成長の秘密。