「別れさせ屋」の工作員にスカウトされた美しき人妻(45歳)の冒険

こうやって別れさせるのか…
本橋 信宏 プロフィール

モラルがはじけ飛んだ

新橋赤提灯街は今宵も焼き鳥の煙で視界が曇る。

人妻・京香とSL広場前で待ち合わせた。

工作員になってから丸1ヵ月、京香はあの元校長の愛人候補として時折、密会していた。 

午後6時、時間通り到着した京香は気のせいか艶めいていた。

向かい側の椿屋珈琲店に入る。

京香は3日に1回、元校長と会ってカラオケに行ったり、食事に行ったりしているという。

「浮気しても、家族に迷惑かけなければむしろ賛成。気持ちいいし、夫にも優しくなれるし」

工作員となった京香は、元校長と懇ろになって盛り上がっていた。

京香は正直に、結婚していることを打ち明けると、かえって元校長の男心を刺激したのか、前より激しく求めてくるのだった。

元校長は、京香にあるプレゼントをした。

「それがなんだと思います?」

私が回答に窮していると、京香は困ったような顔になって答えを教えてくれた。

「穴のあいたショーツ」
 
私たち世代はパンティと呼んだものだが、最近ではショーツというようだ。

「穴あきって、恥ずかしい部分をのぞかれるのがいいの?」

「ううん。はいたままするのが興奮するみたい」

元校長は穴あきショーツをはいた人妻に差し込むと肉欲のまま腰を突き動かすのだ。

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「校長先生、奥さんと子どもふたりで暮らしていたんだけど、10年近く前にある出来事があって別居状態になって、つい最近、お子さんがふたりとも独立したんで離婚したんですって。別れるきっかけって何だと思う?」

「校長の浮気?」

「はずれ。逆なの」

元校長夫妻と隣近所の公務員夫妻とは家族ぐるみのつきあいだった。

ある夜、公務員の亭主が元校長宅にやってきて、リビングでワインとチーズで談笑しだした。

元校長は眠くなったので、2階の寝室でまどろんだ。
 
1時間ほどして階下に降りていくと、なにやら秘密めいた空気が充満しているではないか。

「校長先生、見ちゃったんですって。奥さんと公務員のご主人がキスしているのを!」

アルコールの勢いなのか、それとも以前から不倫関係にあったのか。

「ふたりを見ていると、前から関係があったようなの。大胆」

元校長の人生行路が突然、暴風雨に直面した。

「校長先生、何も言わずそっと2階に上がっていったんですって」

しばらくして夫婦は離婚した。

 

「いままでのモラルがはじけ飛んで、女性関係にのめり込んだの」

京香は元校長から託された穴あき下着を装着して肉交し、校長の心にあいた穴を埋めてやるのだ。

「別れさせ屋の工作活動はとりあえず終了。校長先生と同棲していた依頼者の女性はわずかばかりの慰謝料もらって消えちゃった。校長先生とは個人的にわたし、おつきあいするようになったの」

気になる穴あき下着だが、どこに保存しているのか。

「引き出しの奥に他の下着と一緒にしまってるから、大丈夫。主人はわたしの下着に興味ないから」

夫婦にとって、女房の下着と亭主の仕事ほど無関心なものはない。

人妻の冒険はつづく。

ガード下、闇市跡、花街の名残。昭和の黒幕たちが愛した街。ニュー新橋ビル、スタジオジブリ、謎の壁画、新橋系ナポリタン…新橋には多くの秘密が埋まっている。