「別れさせ屋」の工作員にスカウトされた美しき人妻(45歳)の冒険

こうやって別れさせるのか…
本橋 信宏 プロフィール

「最後までやる必要はないの」

翌週。

京香から別れさせ屋の顛末が報告された。

「SL広場の機関車前に午後6時に待ち合わせして2、3分したら、工作員のミユキさんとおじいさんがやってきました。食事する前にカラオケボックスに行くことになって、近くのカラオケボックスに入りました。2人は居酒屋でちょっと飲んでたみたい。

初めて会ったミユキさんはすごい気立てのいい人。引き立てるのがうまい。おじいさんもミユキさんもカラオケがうまい。ミユキさんのほうは、何気なく別れの歌を選んで歌うのね(笑)。他に女がいたような歌を歌って、おじいさんの顔色をうかがう(笑)。

歌がきっかけでミユキさんが”わたし、昔つきあった男性に彼女がいて、傷ついて別れた思い出があるの”って、くらーく言ったら、おじいさんの顔色が変わるの。わたしはその後で、おじいさんに“ミユキさんはとても思いやりがあって、職場でもすごい人気があるんですよ”って、美辞麗句ばかり並べ立てたわ」

おじいさん、すっかり作戦にはまった様子だ。

 

その翌週。

またもや京香は別れさせ屋の工作活動にかり出された。

「あんなのでお金もらえるんなら、もっとやってもいいわ(笑)。わたし、接客業やってきたから得意なの。でもなにがすごいって、つきあって婚約までもちこんだミユキさんのほうがすごい。結婚詐欺? 大丈夫。だって向こうのおじいさんだって嘘ついてるんだもん。同棲中の彼女がいるのに」

70代のおじいさん、北関東のとある私立高校の校長まで務めた人格者だという。

まあ、こういう人格者ほど下半身はゆるいものだ。

2度目の工作活動。

京香はだめ押しでミユキを褒め称えようと、またカラオケボックスに入った。

3人は酒の勢いもあってしたたかに酔い、京香がトイレに行こうと部屋から出た。

工作活動は意外な方向に転がり出した。

背後から赤ら顔の元校長が追ってきた。もつれるようにトイレ前で京香を抱擁する。最初は酔った勢いかと思ったら、元校長、女性工作員2号京香の耳元でささやいた。

「タイプなんだ。この前からずっと思ってたんだ」

くちびるを奪われた。

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京香が報告する。

「おじいさん、ミユキさんよりわたしのほうを気に入っちゃったの」

「それでどうなったんですか?」

「おじいさんに浮気させることが目的だから、急遽、ミユキさんに代わってわたしが工作活動をすることになりました。最初の工作活動のギャラは2万だったけど、次から倍もらえることになったし、まあいいかなって」

「工作活動っていうけど、実際におじいさんと寝ないといけないんでしょう?」

「ううん。最後までやる必要はないの」

京香が独身時代、大手商社マンたちとSM3Pを実践したり、渋谷のラブホテルで部屋を2つ借りた中年男によって、イギリス人の性感マッサージを受けさせ火が付いたところ、別室で待機していた中年男にまた抱かれるという、男たちの欲望に身をもってこたえてきただけに、この後のことが危ぶまれるのだ。

予期したように京香がこの後、とんでもないことに巻き込まれることになるーー。