「子育てしやすい」サービスではないけれど

法的なことなどは別として、一度こちらに書かせていただいたように、フランスはサービスの良い国ではありませんパリなんて全くバリアフリーではないですから、妊婦さんやベビーカーの方はとっても大変です。

メトロは階段だらけ。パーキングも階段だらけ。エレベーターがあってもしょっちゅう故障しています。ドアは駅のドアも、アパルトマンのドアも、とにかく重い。大人の私でも相当の力を入れて押さなければあかないところが多いのです。
しかも自動ドアはめったにない。私はしょっちゅう、自分のお尻でドアを開けながらベビーカーを押して入っていました。

友人宅のエレベーター。二十扉で、手動で、重い。しかも珍しいわけではない… 写真提供/中村江里子

ただ、こんなに不便なところではありますが、周囲の方々が妊婦さんや小さいお子さんを連れている人たちに優しいのです。
駅の階段の乗降の際には、必ず誰かがベビーカーを持ってくれます。そしてベビーカーを持たない人も何かとヘルプしてくれます。

妊娠中、銀行に行ったとき。私の前には男性が一人待っていただけですが、私の大きなおなかを見た男性が順番を譲ってくださいました。「大丈夫ですよ!!」といったのに!

駅などのタクシー乗り場は体の不自由な方やお年寄り、妊婦さんのほかに4歳以下の子どもを連れている人も自然に優先となります。電車でも妊婦ってわかると、すぐに誰かが席を譲ってくれます。赤ちゃんでなくとも、例えば我が家の次女は7歳ですが、一緒に電車に乗ると、そばの誰かが「危ないから座って」と席を譲ってくれます。電車はかなり揺れますから、7歳でも危ないというのですね。

ちょっと見た目が怖そうな若い男性とかも、やさしい笑顔でそばにいるお年寄りや妊婦さんに席を譲っているのを見て、微笑ましく思うこともあります。
バスは、ベビーカーの人用の場所がありますし、ベビーカーの人が乗降するときに、大変そうなときには必ず誰かがさっと手を差し伸べています。

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お店にベビーカーで入って嫌な顔をされたことはありません。とはいえ、こちらも赤ちゃんを連れて行っていい場所かどうかは的確に判断をしなければなりません。かなりのレストランでベビーカーは大丈夫ですが、大人だけに向けたエレガントなお店にベビーカーで無理やり入るということはしません。そういう場所はベビーシッターさんにお願いして大人だけで行くというルールが浸透しています。

日本で保育園を作ろうとしたら、「子供の声がうるさいからダメ」と近隣の方が反対をしたというニュースを見た時に、日本の将来が心配になりました。日中だけのことなのに……誰もが昔は子どもだったのに……と。

教育費の無償化や女性が働きやすい社会になっていくことに対しては、もちろん大歓迎でどんどん進めていくべきなのですが、それだけではなく、法がどんなに整備されても、それぞれの考え方、とらえ方が変わらないと、変化は訪れないと思うのです。

3人目の出産後。ベビーカーのマナーももちろん大切だが、基本的に「ベビーカーに優しい」のがフランスのよう 写真提供/中村江里子

中村江里子 なかむら・えりこ 1969年東京生まれ。1991年フジテレビ入社。アナウンサーとして活躍したのち、1999年に退社。2001年にフランス人のシャルル・エドワード・バルト氏と結婚し、パリに居住を移す。現在はパリで3人の子育てをしながら、パリと東京を往復。テレビや雑誌、講演会などの仕事を続けている。1年に2冊刊行しているムック本『Saison d' Eriko』で毎号パリ発の最新情報を伝えている。最新号『Saison d’ Eriko Vol.8』の巻末では、フランス人女性の働き方についてのトークも掲載。