「武蔵小杉がいま熱い!」と騒ぐ人たちがまったく気づいていないコト

タワーマンションは目を引くけれど…
現代ビジネス編集部 プロフィール

戦後策定された道路計画が、いま動き出した

再開発によって、昔の武蔵小杉を思わせる貴重な風景は徐々に失われつつある。

劇的な再開発が進む駅周辺エリアの西と南を区切るように走る府中街道(国道409号線)はいま、道路拡幅のための用地買収、セットバックが急激に進んでいる。沿道の古風な木造家屋で茶舗を営む女性が教えてくれた。

 

「道路計画は昭和20年代に作られたもので、もう実現することはないものとばかり思っていましたが、ここ数年で一気に動きが出てきて驚いてるんです。ウチは店舗で別に家があるからまだいいけど、お隣りはひとり暮らしのおばあちゃんのご自宅。あの歳になって、顔見知りのいない土地に移れと言われても、大変なことだと思います」

国道409号線沿い道路拡幅のためセットバックが進む国道409号線沿い。2026年工事完了の計画というが、難航しそう

急激に少子高齢化が進むなか、都市機能の集約により不要な公共支出を避けて税収増を実現する「コンパクトシティ」の実現は不可避だ。タワーマンションのような「タテへの展開」そのものは、その一手段として間違っていない。歩行者通路のない道路の拡幅工事なども、都市機能の改善には不可避だろう。

しかし、武蔵小杉がそういった都市機能集約の成功例になるかというと、それはちょっと怪しい気がする。

タワマン開発以前からの住民が指摘するように、再開発エリアの住民とその周辺に住む住民のコミュニティはつながりも重なりもしていない。そうした現実の課題を無視して、インフラ整備だけがどんどん進んでいく。建設費の高騰で発注先送りが相次いでいるこの時代に、だ。

いずれにしても、街を歩いて取材して感じたのは、多摩川河川敷の向こうから眺めるだけでなく、ぜひ駅で降りて、「住みたい街」の生の空気を感じてもらいたい、ということだ。寄り添うように立ち並ぶ高層ビル群は、武蔵小杉〜新丸子周辺に広がる豊かな生活圏にとって、グーグルマップにドロップされた(位置を目立たせる)ピンのような存在でしかないことに、気づかされるだろう。

人口減少と高齢化を背景に、国のあり方が大きく変わろうとしています。定年までの安定雇用で住宅ローンを返済し、静かな老後生活へ、という人生は、とっくに過去のものとなりました。家を買うのか借りるのか、どこで、どんなふうに暮らすのが幸せなのか。

これからは一人ひとりが新しい時代の「住まい方」を考える時代。現代ビジネス編集部は昨年秋、特別企画サイト『住まい方研究所』を開設しました。皆さんが住まい方を考え、選ぶための役に立つ情報を、さまざまな視点からお届けして参ります。