「武蔵小杉がいま熱い!」と騒ぐ人たちがまったく気づいていないコト

タワーマンションは目を引くけれど…

リクルート住まいカンパニーが今年2月末に発表した「住みたい街ランキング」で、横浜、恵比寿、吉祥寺などの大都市圏に続き、堂々の6位にランクインした武蔵小杉。多摩川河川敷の向こうに立ち並ぶタワーマンション群に象徴される新しい街並みは、すでにいくつものメディアで紹介され、人気はうなぎのぼりだ。いったいどんな街なのか、歩いてみた。(写真/的野弘路)

 

改札待ちの行列ができる街

東京暮らしの長い人でも、「武蔵小杉」と聞いて、その場所や街の雰囲気をぴたりと言い当てられる人はそう多くないのではないか。

渋谷から東急東横線で南に15分ほど。多摩川を渡ると間もなく武蔵小杉駅に着く。立川と川崎を結ぶJR南武線も乗り入れ、2010年にJR横須賀線の武蔵小杉駅が新設されたことで、東京・千葉方面とのアクセスが格段に向上。周辺の再開発が加速して、人気の街となった。

武蔵小杉駅構内武蔵小杉駅構内。平日の早朝は改札待ちの行列ができる

江戸時代、江戸と駿府(静岡)を結ぶ「中原街道」の道中、将軍や大名が休憩所とした「小杉御殿」があったため、「小杉」の名はよく知られ、御殿の周辺も栄えたという。しかし戦前、東急線と南武線の武蔵小杉駅が、御殿より南東に少し離れた場所につくられたため、タワーマンションが立ち並ぶ現在の中心地に、歴史の名残りはほとんど見られない。

そんなわけで、のどかな農村からNECやキヤノンなど大企業の事業所を支える住宅地としての位置づけを経て、再開発の末に「住みたい街」の常連になるほどの華々しい変化を遂げた武蔵小杉。「週刊現代」2018年1月20日号は、次のようにレポートしている。

午前8時、JR武蔵小杉駅には『長蛇の列』ができる。慌ただしく改札に向かう男性会社員(30代)の話。

『毎朝、たしかに人は多いですね。マンションを買っちゃったし、子供も保育園に入れたし、この環境に慣れていくしかないのですが……。正直、駅の混雑ぶりはなんとかならないかと思います』

街を歩くと、林立するタワマンが弊害を生んでいる実態も見えてくる。とにかく風が強いのだ。ベビーカーを押す母親や杖をついて歩く高齢者は簡単に風にあおられる。コンビニの入り口には自動ドアの前にもう一つ透明な壁が設置されている。店員が言う。

『強風が直撃するのを避けるためです。壁を設置するまでは、砂ぼこりや木の葉、ゴミ屑が飛び込んできていました。ここ10年くらいの傾向です。やっぱりタワマンが影響しているんでしょう』」

タワーマンション「11本」の現在

まずは東横線と南武線が一体化した駅の周囲をぐるりと歩いてみたが、次から次へと似たようなタワーマンションが現れ、方向感覚を狂わせる。

位置関係を把握するため、最初に目印にしたのは、駅から一番離れた「パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン タワーズイースト&ウエスト」(53階建)。昨年12月に竣工し、この3月から入居開始という最新物件。公式サイトでは、44階の3LDK(76.01m2)が7,720万円で販売中(3月16日時点)だ。ちなみに近所の不動産屋では、最上階の3LDK(80.02m2)が1億1680万円で売りに出ていた。

パークシティ武蔵小杉ザガーデンタワーズイースト&ウエスト右から、パークシティ武蔵小杉ザガーデンタワーズイースト&ウエスト、(低層マンションをおいて)プラウドタワー武蔵小杉

そこから反時計回りに駅の周りを歩くと、まずは南武線の線路を渡ったところに「プラウドタワー武蔵小杉」(2015年築、45階建)。人工知能を活用したマンション価格推定サービス『家いくら?』を使うと、最上階の3LDK(83.15m2)が7,705万円と見積もられた(以下、断りない限りは同サービスによる推定価格)。

駅直結のショッピングモール「東急スクエア」。平日の昼間に取材では、お洒落な女性たちの姿を数多く見かけた。その上にそびえるのが、「エクラスタワー武蔵小杉」(2013年築、39階建)。ほぼ最上階の38階、3LDK(80.10m2)で7,891万円。

グランツリー武蔵小杉パークシティ武蔵小杉ザグランドウイングタワー(奥)とグランツリー武蔵小杉
シティタワー武蔵小杉シティタワー武蔵小杉。この裏手を綱島街道が走っている

南口そばで東横線の線路を越えると、駅直結の「パークシティ武蔵小杉 ザ グランドウイングタワー」(2014年築、38階建)。最上階の3LDK(89.16m2)で8,178万円、大台に乗らないのは意外な感じもする。すぐ南に見えるのは、複合商業施設「グランツリー武蔵小杉」。その向こうには「シティタワー武蔵小杉」(2016年築、53階建)が。52階の3LDK(71.98m2)で、8,550万円。築5年ながら中古価格は上昇中だ。