レジェンド団地「大泉学園町」に子育てファミリーが殺到する深い理由

「可もなく不可もなく」がイイらしい
現代ビジネス編集部 プロフィール

確かに子連れのお母さんが目立つ

一丁目から九丁目まである「大泉学園町」の最北端、陸上自衛隊朝霞駐屯地と接する九丁目から南に向かって、格子状に区画された町内を数時間にわたってさまよい歩いてみたが、皆無と言っていいほど空き家が見当たらない。

新築中の戸建住宅新築中の戸建住宅が数限りなく…
新築戸建の販売案内町内を歩いていると新築戸建の販売案内もよく見かける

高度成長期に建てられたと見られる家屋も少なくないが、それ以上に、平成以降に建て替えられたとみられる新しい家屋が多い。目下新築工事中の戸建ても数十軒は目にした。

 

郊外の団地を取材すると、高齢者の姿ばかり見かけるのが常だが、大泉学園町では驚くほどに赤子を抱いた母親をよく見かける。町内にいくつかあるファミリーレストランの駐輪場は、チャイルドシート付きの自転車でどこもいっぱいだった。若いファミリーが増えている、という情報はどうやら本当のようだ。

ファミレス前の駐輪状態ファミレス前に所狭しとチャイルドシート付きの自転車が…

ちなみに、大泉学園町は「学園」の名が示す通り、当初は学園都市として開発されるはずだった。しかし、同時期に開発された国立に東京商科大学(現在の一橋大学)が、小平に東京商科大学予科(一橋大学小平キャンパス)や津田塾大学が移転したのに対し、大泉学園は高等教育機関の誘致に失敗した。そんなわけで、学生や研究者はほとんど住んでいない。

鉄道駅から離れ、街の新陳代謝をうながす産業や大学があるわけでもない団地に、なぜこんなにファミリーが集まるのか。地元で50年以上続く不動産屋で聞いてみた。

「まず何よりも、住環境の良さでしょうね。大泉学園町のおよそ北半分は『風致地区』に指定されています。開発当初に300坪単位で整然と区画分譲されてから、道路からの距離や建ぺい率、高さ制限、樹木の伐採規制などが守られ、緑豊かで閑静な住宅街が今日に至るまで維持されている。治安もいいので、子育てファミリーにとってはうってつけなのでは」

昭和の名残りを感じる商店群大泉学園町の北側には昭和の名残りを感じる商店群
アカマツの立派な大木町内のところどころにアカマツの立派な大木が残る
生産緑地町内には家屋のすぐそばに生産緑地が点在し、市民も耕作に参加する

町内には開発当時と変わらない、立派なアカマツの大木がところどころに見られる。作家の故・藤沢周平氏もこの風致地区の環境を愛し、1970年代半ばから亡くなるまでを過ごしたという。

地元の不動産屋はこう見ている

そんな住環境をもってしても、交通の便の悪さだけは何とも否定しがたい気がするのだが……。

「鉄道駅からは確かに遠い。しかし、大泉学園町は実を言うと、東京都内でバス路線が最も多く走っているんです。吉祥寺や阿佐ヶ谷、成増、朝霞、光が丘など、大泉学園駅バス一本で行けるエリアがいくつもあります」

「しかも、着工は多少ズレこんでいるものの、同じ練馬区内の光が丘団地まで来ている都営地下鉄大江戸線が、大泉学園町まで延伸される計画があるのです。これは将来の夢ではなく、すでに国交省の審議会でも優先して進めるべきプロジェクトとして認められ、実現が近づいています」(同)

学園通りのバス路線東京都内で最も多いというバス路線。写真は学園通り、昇降中の町民を数多く目にした

街を南北に貫く学園通り沿いにある、別の不動産屋で話を聞いてみると、異なる視点からの答えが返ってきた。

「子育て環境の良さですよね。練馬区は政策で待機児童の削減を打ち出し、実際に近年、東京23区内でも保育園の確保が進んでいると評価されています。練馬区ホームページにも書いてある通り、去年4月の時点で待機児童は48人。一昨年の166人から大幅に減りました。特に、大泉エリアの待機児童は5人ですから、都内ではかなり恵まれているほうではないでしょうか」

「子育て環境がいいので、祖父母や両親が高齢化しても、街を離れない家族が多いんですよね。ふつうの団地だと、子どもが離れて親が亡くなり、空き家になる、という流れになるんだと思いますが、大泉学園町の場合、古い家屋を壊して子どもと孫がそこにそのまま新築するケースがとても多いんです。歩いてみると、建て替えた家が多いでしょう?」