「キムタクは何を演じてもキムタク」はとんでもない誤解だ

その繊細な演技に気づいていますか
太田 省一 プロフィール

『白い巨塔』(2003年版、フジテレビ系)、『14歳の母』(日本テレビ系)、最近では『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)などのヒット作で知られる井上由美子は、1990年代から木村拓哉の出演するドラマに関わってきた。

そのひとつが1997年放送の『ギフト』(フジテレビ系、飯田譲治との分担執筆。井上は第4、7、9話を担当)である。

連続ドラマ単独初主演作となったこの作品で、木村拓哉は記憶喪失になった謎の青年を演じた。そして運び屋として生きていくなかで自分の犯した過去の失敗を思い出し、良心の呵責に苛まれる。

だが最後はその過去に向き合うことによって新しい一歩を踏み出す。そこには言うまでもなく、過去に人気サッカー選手を警護していた際に起きた事故の責任を感じて苦しむ島崎の姿が重なる。

また井上由美子は、木村拓哉が検事役を演じた『HERO』のような“職業ドラマ”も手掛けている。

彼が旅客機のパイロットを演じた『GOOD LUCK!!』(TBSテレビ系、2003年)とレーシングドライバーを演じた『エンジン』(フジテレビ系、2005年)である。今回の『BG』もまた、その系譜に連なる。

ただこれらの“職業ドラマ”は軒並み高視聴率を挙げる一方で、木村拓哉があたかもさまざまな職業のコスプレをしているような印象を与え、「キムタクは何を演じてもキムタク」という先入観が生じる要因にもなったように思う。

 

魅力のひとつは「受け」の演技

しかし、それは明らかに誤解である。

木村拓哉の演技は、決していつどんなときも同じなわけではない。むしろ共演者とのあいだにその都度生まれる空気感を踏まえた繊細な演技こそが、俳優・木村拓哉のベースをなすものだ。

実際彼自身、演じることの楽しさについてこう語ったことがある。

「もちろん台本に描かれている自分が演じるキャラクターのことは色々考えてはいるんだけど、その現場で一緒に作業をする共演者の方たちと、何かその場で感じたことをそのまま表現するっていう(中略)作業が、やっててものすごい刺激的」である、と(『木村拓哉のWhat’s UP SMAP!』2015年11月27日放送)。

その点、俳優・木村拓哉の魅力のひとつは、共演者に対する「受け」の演技にある。その演技は、その瞬間だからこそ生まれたと思わせる、一種即興的でリアルな魅力を放っている。

『BG』でもその本領は健在だ。

たとえば、第5話で逮捕されることになった先述の元サッカー選手(満島真之介)に対して子どもたちにサインをするためのペンを渡した瞬間、それまでの二人の経緯から感極まって思わず涙をあふれさせたときの表情、あるいは第6話で政治的理由で誰かに狙われていると思っていたが、それが勘違いであったことに逆に落ち込む元総理大臣(橋爪功)に寄り添い「安全だということはわかって良かったです」と声をかけはするが、そう言うことが正しいのか思い悩んでいるような心の揺れを感じさせる目の動きなど。

こう言葉にすると長くなってしまうが、それだけそうした場面での木村拓哉は複雑な感情を一瞬で表現していた。