最終回には矢沢永吉が本人役で出演する(C)テレビ朝日

「キムタクは何を演じてもキムタク」はとんでもない誤解だ

その繊細な演技に気づいていますか
今日、木村拓哉主演の連続ドラマ『BG~身辺警護人~』が最終回を迎える。木村拓哉にとってこのドラマはどういうものか? そもそも木村拓哉にとって演技とは何か? 新刊『テレビとジャニーズ』を上梓した社会学者の太田省一氏が、俳優・木村拓哉とその演技について考察する。

木村拓哉の「カッコ悪い」姿

「誤差なし」の合言葉も話題の『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)(以下、『BG』と表記)が、今日3月15日にいよいよ最終回を迎える。

物語の行方も気になるが、このドラマを見ていて「オヤッ?」と思ったひともいるのではなかろうか。主演の木村拓哉が扮する島崎章は色々と「カッコ悪い」からである。

たとえば、格闘シーンがそうだ。島崎は相手と闘い、しばしば打ちのめされ傷を負う。格闘の後も痛そうに顔をしかめたり、足を引きずって歩いたりとその姿はお世辞にもカッコいいとは言えない。

もちろんいざというときは強く、いつもながらアクションの見事さには目を見張るのだが、ボディーガード役と聞いて無敵のキャラクターを想像していたひとにとっては、ちょっと意外だったはずだ。

「カッコ悪い」木村拓哉はそれだけではない。

 

二人で一緒に暮らす中学生の息子・瞬との関係もそうだ。離婚した妻のところにいた息子は、妻の再婚を機に父親である木村拓哉のマンションで暮らしている。まだ生活をともにし始めて間もない二人のコミュニケーションはぎこちない。

ここでの木村拓哉は「威厳のある父」でも「頼りにされる父」でもなく、素直ではない息子から「あなた」と呼ばれ、ぞんざいな扱いを受けたりする。

さらには、斎藤工扮する年下の同僚・高梨雅也から「おっさん」呼ばわりされるのもインパクトがある。

過去にボディーガードとして働いていたことを隠している島崎に対して不審の念を持つ高梨は、事あるごとに島崎に反発する。そんな不信感はあるにせよ、木村拓哉に対する「おっさん」という呼び方はかなり印象的だ。

〔PHOTO〕gettyimages

こうした木村拓哉の「カッコ悪い」姿は、“いい男・キムタク”のイメージからはかけ離れている。だがそうしたイメージは、逆に俳優・木村拓哉の真骨頂を見えなくさせるものだ。

むしろ彼はずっと、どこか無防備でそれゆえ“弱さ”を抱えた役柄を演じてきた。その意味で今回の『BG』は、実に木村拓哉らしい作品なのである。

「キムタクは何を演じてもキムタク」という先入観

その点、本作の脚本が井上由美子であることは見逃せない。

木村拓哉の作品と言えば『ロングバケーション』(フジテレビ系、1996年)や『HERO』(フジテレビ系、2001年)がまず挙がるだろうが、いずれも脚本は井上ではない。

しかし、それに劣らぬくらい井上由美子は、俳優・木村拓哉の歴史にとって欠かせない存在なのである。