突然の米朝会談合意でわかった、金正恩の驚くべき「現状認識力」

これからの北朝鮮政策の話をしよう
篠田 英朗 プロフィール

国際政治は人間と人間のぶつかり合い

韓国は、あらためてアメリカとともに日本に言及したうえで、関係国とともに制裁を続ける意思を表明している。日本と韓国の立ち位置の違いを反映した役割分担と協調は保たれている。

慰安婦問題をはじめとする歴史問題を感情的にとらえ、過度に韓国をライバル視し、いたずらに感情的にアメリカとの近さを競い合おうとするのは、外交分析的ではない。

そもそも圧力と対話を、二つの対立する選択肢としてとらえる、一部の日本人の見方は、奇妙だ(9条解釈「通説」と、目的と手段の倒錯)。

必要な圧力をかけたら、その反応を見なければならない。当然のことだ。

対話だvs圧力だ、戦争反対だvs戦争不可避だ、と言いあっている様子は、奇妙としか、言いようがない。

そもそも占い師のように、戦争が起こるとか起こらないとかを、ブツブツ言うだけの「識者」がいることが奇妙だ。

国際政治は人間と人間のぶつかり合いの世界だ。次の相手の出方で、次の自分の出方も決まる。それ以上でも、それ以下でもない。

もちろん現実に可能なオプションの範囲は的確に識別しなければならないが、起こりうる事態が単一の事柄に収れんするなどということは、国際政治の世界ではありえない。

国際政治分析者が、占い師の真似事をすることに、何か意味があるとは思えない。

 

同盟包囲網の維持と各国の利益

こうした事情は、米朝会談の開催が決まった現時点でも、変わっていない。

金正恩氏が同じ情勢理解を持っていることが確かめられた、ということは、問題の解決を、全く約束しない。情勢理解の共有は、すべてが予定調和的にまとまっていくことを示唆しない。

にらみ合う緊張関係の中で、両者が同じ情勢を見ていることが確認されただけだ。合意がもたらされる保証などない。むしろ、計算された騙しあいが続いていく可能性が高い。

引き続き日本は、アメリカとの同盟関係、韓国とのアメリカをはさんだ間接的同盟関係、中国とロシアの国連安全保障理事会をはさんだ協調関係を維持していくことに尽力しなければならない。それが日本の国益にかなう。

もちろん、これらの国々の全てが、共通の利益とともに、日本とは異なる利益を持っていることも、冷静に認識しておかなければならない。