生徒の1割しか塾に行かない公立校が、名門進学校であり続ける秘密

「異色のOB」が語る
佐藤 優, 杉山 剛士 プロフィール

しかし今回、浦高生たちや浦高の卒業生たちといろいろ話して頼もしいなと思ったのは、彼らは勉強嫌いになっていないんですね。高校の教育がきちんと活きているとわかります。

杉山 いま、教育に関する意識の高い方たちからは浦高教育に関心が寄せられ、中高一貫校の中等部に入れたけど高校からは浦高に入れたいという問い合わせや小学生の保護者の方からの問い合わせが増えています。

佐藤 そういえば、浦高生が小学生に教えるということもやっているんですね。

杉山 生徒が先生になって「浦高生による小学生スポーツ教室」もやっていますし、「冬休み特別教室」では多面体の折り紙を教えたり、小学生と一緒に星空の観察、化学実験をしたりしています。いつも盛況で、私も毎年楽しみにしているんですよ。

 

文系には数学を、理系には歴史を教える

佐藤 浦高で昔と変わった部分というところでは、単位制の導入がありますね。具体的にどういうことですか。単位を落とした場合はどうなるのでしょうか。

杉山 浦高流の単位制ということなので、一応単位制という仕組みはとっていますけれども、単位が取れなくてもそのまま仮進級できます。

佐藤 単位制という形で脅しているわけですか(笑)。

杉山 そういうわけではありませんよ(笑)。単位制というのは、単位制にすることによって科目を選択することになりますから、少人数の授業が可能になります。そのため教員も増えましたから、よりきめ細かな指導ができています。英語でも数学でも理科でも社会科でも、小規模のサイズでの演習や対話を数多くとり入れた授業になりますから、生徒の学力に応じて柔軟に対応できるんです。

杉山剛士校長

佐藤 それはいいですね。浦高生にとっての一番の難関とは1年生の夏休みです。それまでは中学校でトップクラスだった生徒でも、1学期にいきなり真ん中以下の成績に下がったりする。

それですっかりやる気をなくしてしまい、夏休みをのんべんだらりと過ごしたり、勉強はもうぶん投げたりするとなると、2学期以降はかなりキツくなってくるんですね。そういう生徒たちの指導はどうしていますか。

杉山 授業は単元ごとにやっていますので、まず、そこで落ちこぼれを出さないようにという基本ラインがベースにあります。それが達成できなかったら、再テストとか再々テストの形でベーシックをしっかり積み上げていきます。それでもなかなかついていけないという場合は、特別に補習する形でケアします。そういう二重のケアです。

佐藤 追試があるんですか。

杉山 あります。

佐藤 私の時代には追試はありませんでした。

浦高の一番の特徴というのは、やっぱりカリキュラムですか。

杉山 まず、カリキュラムがありますよね。つまり、教養主義という伝統に則って幅広に学んでいくという。文系でも基本的には数Ⅲの内容まで学ばせます。理系も歴史、公民などの文系科目を幅広くやりますし、卒業後には親元を離れる生徒も少なくありませんから、すぐに自立した生活ができるように家庭科も卒業前の3年次に必修でやりますよ。佐藤さん、物理はどうでしたか。

佐藤 実験をやってレポートをしょっちゅう提出させられて。

杉山 それそれ。いまも変わりません。物理のレポートは「物レポ」というんですよね。生徒たちは年間20本の物レポを書いています。

佐藤 思い出しました! 私は物理が逃げ回るほど嫌いで、2を取ったこともあります。しかも一部の実験器具は自分で手作りしなければならなかったし。

杉山 それもいまでもやっています。実験室には先輩たちが使った実験器具がたくさん残っています。大正時代の器具もありますよ。