薄毛に朗報!「髪の毛」の再生医療が2019年にも実用化

抜けてしまった歯や毛髪がよみがえる
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 歯のタネをつくって、歯の再生に成功!

これまでに世界中の研究者が、30年以上にわたり器官のタネをつくろうとしましたが、だれも成功できませんでした。お母さんのおなかの中にいる胎児から幹細胞を取り出すと、ばらばらになってしまうからです。器官のタネをつくるには、2種類の幹細胞が情報をやりとりできるように、きちんとくっつけて立体的に積み重ねる必要があります。

器官のタネはとても小さいのですが、それをつくっている細胞の数は数千個から10万個以上もあります。みなさんは、「10万個のピンポン球を、きれいに崩れないように積み重ねてください」と言われたらどうしますか。ピンポン球は、積んでも積んでも、すぐに崩れてしまうでしょう。2種類の幹細胞をくっつけて積み重ねるのは、それと同じようにとても難しいのです。

 

でも私たちは、ついに成功しました! 成功のかぎは、コラーゲンという粘りのある液体を使うことでした。

私たちがつくったのは、歯のタネです。なぜ歯なの? と思うかもしれませんね。心臓や肝臓を再生できたら、移植を待っているたくさんの人を救うことができます。ぜひ実現したいと思っています。

でも、心臓や肝臓は大きくて形も複雑なので、器官のタネをつくることができても、大きく育てることは難しいでしょう。そこで、小さくて、体の表面にあって扱いやすい歯の再生から挑戦することにしたのです。

まず、マウスの胎児から、歯のタネをつくる2種類の幹細胞を取り出します。それぞれを集めて2層になるようにコラーゲンの中に入れます。粘りのあるコラーゲンが外側からおさえつけて幹細胞が散らばるのを防ぎ、2種類の幹細胞どうしがぴったりくっつきます。その状態で幹細胞を育てると、ねらったとおり、歯のタネができました。

歯のタネはできましたが、きちんとした歯にならなければ、歯の再生に成功! とは言えません。そこで、マウスの歯を抜いて、その場所に歯のタネを移植しました。

すると、1ヵ月ほどして歯が生えてきました。だんだん大きくなり、反対側の歯とかみ合わせがちょうどいい大きさで成長が止まり、かたさも十分です。歯の中には神経や血管も入りこんでいて、痛みも感じます。完全な歯の再生に世界で初めて成功したのです! この技術を使って、だ液や涙を出す器官の再生にも成功しました。

もうすぐ実現! 髪の毛の再生

再生した器官を医療にいつごろ使えるようになるの? と気になりますよね。遠い未来ではありません。私たちは2019年の実現をめざしています。まずは髪の毛の再生です。

器官のタネのもとになる2種類の幹細胞は、ふつう胎児にしかありません。でも唯一、生まれたあとも2種類の幹細胞があって、再生を繰り返している器官があります。それは毛包です。毛包は、毛をつくる工場です。髪の毛は数年ごとに抜け、新しい髪の毛が生えてきます。それは、みずから毛包を壊して、新しい毛包を再生しているからなのです。

毛包を再生できる2種類の幹細胞を取り出して体の外で増やし、たくさんの毛包のタネをつくって移植すれば、毛包を増やすことができるはずです。毛包が増えれば、髪の毛も増えます!

私たちは、まず大人のマウスの毛包から2種類の幹細胞を取り出して毛包のタネをつくり、それを毛が生えないマウスの皮膚の下に移植しました。すると、正常な毛が生えてきました。しかも、周期的に抜けて、新しい毛が生えます。正常な毛包の完全な再生に成功したのです。

男性だけでなく、女性でも脱毛症で悩んでいる人が、たくさんいます。この方法で髪の毛を再生できれば、いろいろな脱毛症を治療できます。いま会社や大学などの研究者と協力して、2019年に世界初の器官再生医療を実現するための研究を進めています。毛包での成功は、肝臓や心臓のような大きな臓器の再生にもつながっていくでしょう。(文:鈴木志乃/フォトンクリエイト イラスト:岩崎邦好デザイン事務所)

記事提供:理化学研究所