シャネル爆買い→ホスト→整形→デリヘルバイトの先に見えたもの

【特別対談】オンナの愛と資本主義
鈴木 涼美, 中村 うさぎ プロフィール

天国は、地獄の裏側ではなく地獄の中にあった

鈴木 私は当時から、もちろん今も中村さんのショッピングエッセイが好きなんですけど。だんだんとお買い物について書かれることが減って、今では半ば自省的に「買い物依存症時代」と定義して当時のことを書かれているじゃないですか。ショッピングエッセイに大いに救われた私としては、あの時代を苦しい依存症時代っていう病気として書かれてるのを見ると少し寂しくなってしまいます。

中村 一番苦しかった時期でもあったんですけど、でも「一番楽しかった時期は?」って聞かれたらあの買い物依存症の時って答えますね。あの頃は月末になるたびに出版社からお金を前借りしてました。それも本当に申し訳ないって感じながら。向こうは当然呆れかえってて、「軽蔑されてるだろうな」って感じながら頼んでいたので苦しかった。

写真:村田克己

親から借りるのも嫌だったし。何度か借りてしまったこともあったんですけど。普通、親に電話かけると、家を出て何十年も経った娘ですよ、「元気?」って聞くじゃないですか。なのに電話に出た父の第一声は「金なら貸さんぞ」って。そんな関係だったから親にも借りられないし、なのに買い物は止められないしで自己嫌悪にもなりましたし、地獄だと思ってましたね。

ただ、その借金苦を抜けたら私は幸せになれるって思ってたんですけど、いざその地獄を抜けてみたらそこには天国はなくて、砂漠しかなかったんですよ。「何のために生きてるんだ私は」って。その時に天国は、地獄の裏側にあるんじゃなくて地獄の中にあったんだ、って思いました。天国と地獄は同じところにあるんですよ。だから恍惚感があって苦しい。

恋愛に考えるとよくわかりますよね。恋愛ってものすごく陶酔感があるじゃないですか。恋愛の絶頂期って愛されてる喜びや快感、幸せがあると同時に、嫉妬などののたうち回るような苦しみの両方がある。結局、過去を振り返ってその恋愛は天国か地獄だったかって聞かれると、「両方だった」って答えるしかないじゃないですか。

鈴木 確かに。恋愛って一番好きな時が一番楽しくて一番つらいですよね。

中村 どうでもよくなると楽しくもないし!

 

鈴木 学生時代のときなんですけど。ホストクラブで毎日同じ席に座るっていうノルマを自分に課してる時があって、熱があっても行ってたので、本当にしんどいんですけど楽しかった。未だに何かないと楽しくないです。中村さんにしても、整形の次には何にハマるんだろうってみんなが期待しているところがあると思うんですよね。依存というか、浪費の体質が収束していった時の寂しさってすごくないですか?

中村 ほんとにすごいですよね。依存症から抜けたときに幸せが待ってると思ってたのに、いざ抜けたらそこにあるのは虚無ですからね。