石垣市長選挙「保守分裂」の深層~なぜ自民系はふたつに割れたのか

カギとなる「事件」の背景に迫った

沖縄県で名護市に続く注目選挙となった石垣市長選挙は3月11日に投開票され、現職の中山義隆氏(50歳。自民、公明、日本維新の会推薦)が宮良操氏(61歳。社民、社会大衆、共産、自由、民進推薦)と前自民党県議の砂川利勝氏(54歳)を破り3期目をものにした。

争点のひとつは、「尖閣問題」であった。中国脅威論の観点から南西諸島に自衛隊配備を進めることは、政府与党の重要課題の一つ。とりわけ尖閣諸島を眼前にひかえる同市の市長選挙は、「配備計画に理解を示す中山氏に何としても勝ってもらわなくてはならない」というのが官邸や防衛省の意向だった。

結果は政府の思惑通りになったが、地元では「これで石垣の保守分裂は修復不可能になった。はたして自衛隊配備がスムーズに進むだろうか……」と今後の展開を危ぶむ声が上がっている。どういうことか。

 

なぜ「保守分裂」となったのか

今回の石垣市長選は、「自民党系候補」が二人立候補する保守分裂選挙となった。何としても現職に勝ってもらわなくてはならないという空気の中で、なぜ保守系で前自民党県議の砂川氏が出馬したのか。自民党関係者が事情を明かす。

「自衛隊配備を企図する政府与党にとって、政府に協力的な中山が石垣市の市長であり続けることは願ってもない好条件。『中山市長』続投のため、自民党本部では二階(俊博)幹事長みずから砂川に身を引くよう説得したのだが、本人は最後まで受け入れなかった。だから、やむを得ず選挙前に除名した」

自民党沖縄県連は先月19日、砂川氏を除名処分とした。除名となってまで、なぜ砂川氏は出馬したのか。政策的な相違か、といえばそうではない。中山氏と砂川氏の間には大きな「亀裂」が入っていたのだ。背景を地元紙の記者が説明する。

「石垣市議会の保守系は真っ二つに割れてしまっているんです。事の発端は2012年の沖縄県議選でした。保守系からは砂川氏と地元経済界の重鎮が出馬したのですが、中山市長は後者の支持にまわったのです。このことが砂川氏や氏を支持した保守系市議らの反発を買い、その後の政局にも遺恨を残すことになりました」

結局、12年の県議選では砂川氏が勝ったが、中山市長と一部保守系市議らの間には大きな溝ができてしまった。

「その後、石垣市の副市長の続投を巡る対立や、中山氏が台湾で裸の女と一緒に映っている写真がばらまかれたりする騒動が相次ぎ、二つの陣営の緊張は高まるばかりでした」(同)

「写真騒動」といえば、石垣市で知らない人はいない。16年9月、中山氏に上半身裸の女性が乗っかっている写真が印刷された“怪文書”140通ほどが、何者かによってばらまかれたのだ。

中山市長が即座に開いた記者会見での説明によると、写真は中山氏が市議時代に経済団体の視察で台湾を訪れ接待を受けた折、飲食店の女性が服を脱ぎ出し中山氏に乗っかってきたところを撮られたものだという。中山氏は被疑者不詳のまま名誉棄損で刑事告発した(『八重山毎日新聞』16年9月11日付)。

そして「決定打」となった事件が起こる。写真騒動から1年後の17年9月、現職の石垣市議2人を含む計4人が、市長に職務を強要した疑いで逮捕されたのだ。逮捕に踏み切った沖縄県警捜査二課や八重山署の発表によると、この4人はゴルフ場建設を進めるため、件の写真をネタに中山市長を脅して、市有地の貸し付けを迫ったという(職務強要罪)。

端から見れば、スキャンダル写真を使って市長を脅していた悪い輩が逮捕され、「一件落着」のように思えるのだが、なぜこの逮捕事件が砂川氏をして「中山許すまじ」という激憤を抱かせ、市長選出馬に踏み切らせたのか。