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名門・富士フイルムに訪れた「新たなる危機」の深刻度

フィルムレス化の波は乗り越えたが…

名門企業「富士フイルム」が揺れている。同社は銀塩写真の消滅という一大危機を、富士ゼロックスの子会社化という荒技で乗り切った。ところが今度はペーパーレス化の進展によって複写機事業が低迷。富士ゼロックスで不正会計が発覚するという前代未聞の事態に陥った。

長年の夢であった米ゼロックス本体の買収を決断し、体制を立て直す戦略に出たものの、米国の投資家は猛反発しており、状況は混沌としている。

一方、かつてのライバル企業で、経営破綻から再生を果たしたコダックは、なんと独自の仮想通貨「コダックコイン」の発行を表名。仮想通貨を通じてデジタル画像の権利保全や販売を行うという、奇想天外なプロジェクトに乗り出している。

富士、コダック、ゼロックスの3社は昭和の時代、日本のビジネスマンの誰もが憧れる超優良企業だった。だが、時代の流れはかくも厳しい。

 

東芝や日立の二の舞か

2018年1月31日、富士フイルムホールディングス(以下、富士フイルムHD)は米事務機器大手ゼロックスの株式50.1%を取得し、子会社である富士ゼロックスと経営統合すると発表した。

富士ゼロックスは、富士写真フイルム(当時)と米ゼロックス(厳密には米ゼロックスの関連会社)の合弁会社として1962年に設立された企業である。富士ゼロックスは、米ゼロックスの事業を、日本をはじめとするアジア太平洋地域で展開しており、それ以外の地域は米ゼロックスが統括するという棲み分けが出来ている。

今回の買収は、富士ゼロックスの親会社である富士フイルムHDが、米ゼロックスの事業を買い取り、傘下の富士ゼロックスと統合するということなので、富士フイルムHDは、米ゼロックスが展開するすべての事業を手に入れることになる。

富士フイルムHDの古森重隆会長〔PHOTO〕gettyimages

昭和の時代、富士写真フィルムは米国の名門イーストマン・コダックと肩を並べる企業として、多くのビジネスマンが憧れる存在だった。米ゼロックスや関連会社である富士ゼロックスも優良企業の典型であった。

長年、富士ゼロックスの会長・社長を務めていた故小林陽太郎氏は、外資系出身でありながら、日本の財界において大きな影響力を持っていたが、これも同社が持つ特別な立場をよく表わしている。

今回の買収にあたって、富士フイルムHDの古森重隆会長は「ゼロックスの買収は長年の夢だった」と語ったが、その気持ちは本当だろう。米国の名門企業であるゼロックスを手中に収めるというのは、富士フイルムの経営者として感慨深いはずだ。

だが、現実は厳しい。東芝のウェスチングハウス買収や日立によるIBMのHDD(ハードディスク・ドライブ)部門買収が典型例だが、米国の名門企業が日本企業に身売りするのは、決まって経営が傾いている時である。今回の買収は、富士フイルムHDにとって火中の栗を拾う行為となる可能性が高い。